[もういちど]

監督・脚本:ポール・コックス/キャスト:ジュリア・ブレイク、チャールズ・ティングウェル、テリー・ノリス他/2000年 オーストラリア/95分/配給:コムストック
2001年3月24日、シネスイッチ銀座・関内アカデミーにてロードショー

70歳に近づいた主人公クレア(J・ブレイク)は、優しい夫(T・ノリス)と、立派に医者として成長した息子に囲まれ、毎日平穏な日々を過ごしていた。そんな彼女の元に、突然一通の手紙が届く。差出人は、50年ほど前に真剣に愛し合いながら別れざるを得なくなってしまった初恋の相手・アンドレアス(C・ティングウェル)だった。二人は、昔の待ち合わせ場所である、駅のプラットホームで半世紀ぶりに再会をはたす。50年ぶりに再会したことで、クレアの中で長い間眠っていた“女”が呼び覚まされる。もういちど輝きたい。もういちど花開きたい。残された時間の大切さを知っているからこそ、その思いは純粋で強いものとなり、クレアは夫と別れて残りの人生をアンドレアスとともに過ごす決心をする。

いつまでも“女”であり続けたいと願い、何よりも“女”であることを選ぶ女性の生き方を、細やかに大胆に描いた作品。監督・脚本は、人間の尊厳を描いた『ある老女の物語』で世界的に高い評価を受けたオーストラリアの名匠ポール・コックス。これが長編18作目となり、本作で2000年モントリオール国際映画祭グランプリ/観客賞を受賞している。主人公クレアを演じるのは、これまでにも何度かポール・コックスの作品に出演し、映画やテレビで活躍しながら、数々の賞に輝いている名女優ジュリア・ブレイク。ポール・コックスは、クレア役は彼女しかいないと考えて脚本を執筆し、撮影開始よりもずっと前に、話し合いながら役柄の性格付けを行ったという。そのため、クレアには単なる役を超えて、ジュリア・ブレイクという人間自身が大きく反映されている。クレアの夫ジョン役には、オーストラリアで最も傑出したテレビ俳優の1人であり、実生活でもジュリア・ブレイクと30年来の夫婦であるテリー・ノリスが、恋人のアンドレアス役には、50年近くにわたって数多くの映画に出演してきた、オーストラリア映画界の重鎮チャールズ・ティングウェルがあたっている。撮影は、オーストラリア南部のアデレイドとベルギーのアントワープで5週間に渡って行われ、キャストやスタッフが深い信頼関係で結ばれた、良いチームワークの中で製作された。「生の限り」があるゆえに女として、そして男として、訪れる死の瞬間に後悔せぬよう誠実に生きようとする主人公たちの姿は、興味深く、また切ない。

Text : Yoshi Mizu

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