[ショコラ]

監督:ラッセ・ハルストレム/原作:ジョアン・ハリス/脚本:ロバート・ネルソン・ジェイコブス/撮影:ロジャー・プラット/出演:ジュリエット・ビノシュ、ジョニー・デップ、ジュデイ・デンチ/アルフレッド・モリーナ、レナ・オリン、キャリー=アン・モス/上映時間:121分/配給:アスミック・エース、松竹/2000年アメリカ

フランスの静かな村。冬のある日、謎めいた女性ヴイアンヌが娘を連れて越してきた。伝統が深く根づく村で、母娘は教会のそばにチョコレート・ショップを開く。それぞれの客の好みにピタリとあわせて勧められるヴイアンヌのチョコレートに、人々はすっかり虜になった。カトリックの断食期間が来ても、村びと達が教義に反してチョコレートを食べていることに愕然となった指導者レノ伯爵はチョコレート・ショップへの出入りを禁じ、ヴイアンヌを村から追放しようと画策する。そんな時、若く美しいジプシーの青年ルーが村にやってきた。彼はヴイアンヌに好意を抱き、彼女に協力していく。村は因習を守ろうとする者と自由な風を選ぼうとする者との間で対立が生まれていく…。

「ギルバート・グレイプ」「サイダーハウス・ルール」のラッセ・ハルストレム監督の最新作。「サイダーハウス・ルール」ではアカデミー賞でも5部門にノミネートされ、いよいよ受賞の呼び声も高い本作はキャスト・スタッフとも万全の制作体制で行われた、しっかりした手ごたえの作品だ。
ジョアン・ハリス原作のストーリーのおもしろさはもちろん、主演のジュリエット・ビノシュやジョニー・デップなど存在感、脇を固める俳優達の演技力、さまざまなチョコレートの美しさ、脚本の素晴らしさ…などなど数えあげたら切りがないほど随所に見どころがある。中でも注目したいのは「ギルバート・グレイプ」「サイダーハウス・ルール」でも担当したデザインしたレネー・エールリッヒ・カルフェスで、今回も古着のような新しいような、どこにでもありそうでどこにもない素敵な雰囲気の衣装をつくっており、それぞれの役柄の魅力を高めている。
とにかくチョコレートを食べる幸せな陶酔感が画面から伝わること、伝わること…劇場を出たらすぐにチョコレートを食べたくなること請け合い。中でもジョニー・デップがチョコレートを頬張ると、味が伝わってくるような気さえして、困ってしまったほどだ。映画の中の“ショコラ”+“唐辛子”のように、甘くてスパイシーな香りがするおとぎ話である。

Text : ogura karuvi

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