[ツィゴイネルワイゼン]


監督:鈴木清順/プロデューサー:荒戸源次郎/企画:伊東謙二/脚本:田中陽造/撮影:永塚一栄 出演:原田芳雄、大谷直子、藤田敏八、大楠道代、麿赤児、樹木希林/上映時間:144分/配給:リトル・モア/1980年日本

大学教授の青地(藤田敏八)と元同僚の友人中砂(原田芳雄)は旅先で、弟の葬式帰りだという芸者・小稲(大谷直子)に会う。一年後、結婚したという中砂を訪ねた青地は、その妻・園が小稲に瓜二つであるのに驚く。書斎でサラサーテの「ツィゴイネルワイゼン」のSPを聴く二人。中砂と園の間には娘・豊子が生まれるが、二人は次々と死んでしまう。数年後、青地のもとに美しい少女に成長した豊子を連れた小稲が現れ、中砂が貸してあるサラサーテのレコードを返して欲しいという…。

[陽炎座]


監督:鈴木清順/制作:荒戸源次郎/企画:伊東謙二/プロデューサー:花田良知/原作:泉鏡花/脚本:田中陽造/撮影:永塚一栄/出演:松田優作、大楠道代、中村嘉葎雄、楠田枝里子、原田芳雄、加賀まりこ、大友柳太朗、麿赤児、他/上映時間:139分/配給:リトル・モア/1981年日本

大正末年、新派の劇作家・松崎春狐(松田優作)は落とした付け文が縁で品子(大楠道代)という美しい女に会う。そのあと三度も会う不思議をパトロンの玉脇(中村嘉葎雄)に話すが、ある日、品子と一夜をともにした部屋が玉脇家の一室と酷似していることを発見してしまう。品子との心中をそそのかす玉脇。アナーキスト(原田芳雄)、金髪のもう一人の玉脇の妻イネとの出逢いが絡みあい、いつしか幻のような芝居小屋「陽炎座」の妖しい世界へ紛れ込むのだった…。

[夢二]


監督:鈴木清順/制作:荒戸源次郎/脚本:田中陽造/音楽:河内紀/梅林茂/撮影:藤沢順一/出演:沢田研二、坂東玉三郎、毬谷友子、宮崎萬純、広田玲央名、大楠道代、原田芳雄、長谷川和彦、麿赤児、他/上映時間:128分/配給:リトル・モア/1991年日本

シルクハットの人の群れとふわふわと舞う紙風船。かきわける夢二(沢田研二)は、フロックコートの男に拳銃に引き金を引かれる悪夢にとりつかれている。
駆け落ちを約束した恋人・彦乃(宮崎萬純)とは金沢の湖畔で落合うことになっている。一人、先に向かった夢二は湖畔に浮かび上がってくる筈の夫の死体を待つ女・脇屋巴代(毬谷友子)と出逢う。逢瀬を重ねる夢二と巴代に忍び寄る、フロックコートの影。立会人の天才画家・稲村御舟(坂東玉三郎)は魔界の使者か?
紅葉の金沢---いつしか湖は血の色に染まり、もはや時さえ立ちどまる…。


鈴木清順監督の「浪漫三部作」の完全ニュープリント版を”DEEP SEIJUN”として一挙公開。 かつての日本の美しさをこんな風に表現できるのか…、と次から次へと三作続けて観てしまった。この”豪華”さは、大正時代の正確な再現としての美しさによるものではない筈だ。あくまで現代に生きる鈴木清順監督の大正時代の美しさへの表現だろう。
むかしの人は本当に現実とその境を感じたりしたのかろうか…?人の匂いの愛おしさとあの世への誘惑とでふらふら彷徨う、そんなことがあったのだろうか?男達の「あの世」へ続く世界からの、翻弄され方そのものが強烈な魅力となっている。
インタビューの中でも鈴木清順監督が「クセなんだ」と語っているように、カットごとに人間の位置が変わる、独特のつなぎにも驚かされてしまう。それがストーリーの不条理性とも絡まって、観客の集中を導いてゆく。なんといっても男はみな弱く、女はみな妖しく、この人間のあり方自体がすごくエロティックで、画面から目が離せない。

Text : Ogura Karuvi



Copyright (c) 2001 UNZIP