[天上の恋歌]

監督・脚本:ユー・リクウァイ/キャスト:レオン・カーファイ、ワン・ニン、リュ・リーピン、ロルフ・チョウ他/1999年 109分/香港/配給:ビターズ・エンド
2001年GW、シネ・アミューズにてロードショー

アダルトビデオ店を経営している冴えないヒモ男、ジエン(L・カーファイ)は年上の女性ヤン(L・リーピン)に養われて暮らしているのに、女にだらしがない。ある日、コンビニで出会った娼婦エン(W・ニン)の清純さに一目ぼれしてしまう。エンは、中国本土からやった女性で、辛かった過去の思い出にとらわれながらも短い滞在期間中に見つけた仕事は娼婦だった。ジエンの同棲相手ヤンも辛い過去を持っていた。ダンサーをしていたのだが、事故で足首から先を失ってしまい、今はレストランの受付嬢をしてジエンを養っているのだ。そんなジエンの店に、エレベーター整備士のリー(R・チョウ)が客としてやってくる。リーはジエンにぼったくられそうになるがなんとか逃げおおせ、それ以来ジエンのことを恨みに思っていた。そうして不器用な4人の出逢いとすれ違いが奏でる四重奏は、本当の別れがやって来るまで美しく響き続けるのだった。

4人の男女がそれぞれに出逢うのに、決して一同に会することはないという不思議な展開で物語は進行していく。監督は、本作が劇映画長編デビューで、カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品という快挙を成し遂げた、ユー・リクウァイ。カメラマンとしての評価も高く、アジア各国から注目を集める、香港インディーズを代表する映画人である。キャストは『愛人/ラマン』に主演し世界的にスターとなり、本作ではプロデューサーとしても活躍している、香港を代表する俳優のレオン・カーファイ、『青い凧』で93年東京国際映画祭最優秀女優賞を受賞したリュ・リーピン、そして本作において劇映画デビューし、しかもいきなりカンヌ国際映画祭に招待された期待の新星ワン・ニン、香港のバーで監督と意気投合し、役者としてだけではなく、インディペンデント映画には欠かせない雑用係として制作にも関わっているロルフ・チョウ。カメラマンのライ・イウファイは、本作でストックホルム国際映画祭最優秀撮影賞を受賞した。説明するようなセリフを極力省き、観る者が感情移入することを頑なに拒みながらも、しぐさや表情を丁寧に捕らえることによって、登場人物の内側に秘められた想いをすくい上げる演出は見事。香港という都会の風景からにじみ出ているやるせなさが画面いっぱいに広がっていて、切なさを感じさせる映画だ。

Text : Yoshi Mizu

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