[SHOWER こころの湯 ]

監督・脚本:チャン・ヤン/出演:チュウ・シュイ、プー・ツンシン、ジャン・ウー/製作:ピーター・ローアー、他/1999年中国/92分/配給:東京テアトル・ポニーキャニオン/初夏日比谷シャンテ シネにて公開

北京の下町でリュウ(チュウ・シュイ)が経営する銭湯「清水池」は、毎日常連で賑わっている。風呂の中で歌う青年、リュウのマッサージを受けるオジサン、コオロギを戦わせたりする老人達。知的障害者である次男のアミン(ジャン・ウー)は、楽しそうに父の仕事を手伝っている。そんなある日、父の仕事を継がずに、都会でビジネスマンになっている長男のターミン(プー・ツンシン)が戻ってきた。アミンから届いた葉書に横たわる父親の絵が描かれており、もしや父が倒れたのでは…。と心配したからだ。 元気な父の姿を見て安心したターミンは、2・3日で帰るつもりだった。しかし、アミンが迷子になったり、父が風邪で倒れたりとなにかと事件が続く。仕方なしに滞在を延ばして銭湯を手伝うはめに…。店を手伝いながら、楽しそうに毎日通 うお客さんを見ているうちに、アミン父親の仕事を理解するのだった。 そんな矢先、地域開発のために銭湯の取り壊しが決まってしまう。

下町情緒って、アジアでは共通だったのかー。中国に行ったことないのに何だか妙に懐かしい感じ。 銭湯の雰囲気が、まさに善き中国の下町って感じなんです。古いけど、丁寧に掃除されて清潔な脱衣所。お湯の音が風呂場に響いて、お風呂に入っている人がみんなゆったりくつろいでいて、リズミカルな音をだしているマッサージも気持ちよさそうだったなあ。風呂場が社交場で、裸の付き合いが、あたたかみがあって。そんな銭湯の良さを都会から戻ってきたターミンが理解できたのは、きっと都会の生活を一度味わったからなのね。と同じく都会でギスギスと働く私は実感してしまいました。

また、地味なのに配役がいい! お父さん役のシュウ・チェイは、NHKドラマ「大地の子」で日本人孤児の養父役を愛情深く演じていましたね。あのテレビにも涙しましたが、今回もしかり。いい味だしてるのよ〜。ターミン役のプー・ツンシンは、出演者に彼以外にはお年頃の若者が少なかったので(風呂屋のお客は爺さんがメインだものねえ)余計引き立ったのかもしれないけれど、精悍でかっこよかった。舞台が舞台なだけに仕方がないのかもしれないけれど、裸のシーンが多いのはファンサービスだったのでしょうか(?)。ただ、配役も設定も流れも◎なのに、というか良すぎるだけに終わり方が残念。なぜなら、最後はちょっと物悲しい結末。現実って思い通 りにはいかないものだというのは分かっているけれど、『寅さん』と『時間ですよ』をこの映画の中に見ていた私としては、最後の最後で大どんでん返しがあればなあ!と思わずにいられませんでした。でも、それを差し引いてもやっぱりこの映画は癒し系の映画です。
あー、銭湯にいって湯当たりするまで広いお風呂に入っていたい!と誰もが思うことでしょう。

Text :Sun Willow

Copyright (c) 2001 UNZIP