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70年代、ドイツ。20歳の青年フランツ(マリック・ジディ)は、街で中年の男レオポルド(ベルナール・ジロドー)に声をかけられ、婚約者のアナ(リュディヴィーヌ・サニエ)とのデートをすっぽかして彼の家を訪ねる。はじめはお酒を軽く飲んだだけでその場を去ろうとしたフランツだったが、次第にレオポルドの不思議な魅力にとらわれてしまう。
フランツはレオポルドの家で一緒に暮らしはじめた。だが、どうしようもない程にレオポルドを愛してしまったフランツと、フランツと生活を共にすることで、日増しに苛立ちを募らせるレオポルドの関係は、やがて破綻へと向かう。 そんなある日、フランツの婚約者だったアナと、かつてレオポルドと暮らしていたヴェラ(アンナ・トムソン)が現れ、4人の関係は予想もしない方向に向かっていった…。 “より多く愛するものは常に敗者となる…”これは「焼け石に水」のキャッチコピーである。どきりとさせられるこの言葉は、しかし真実なのかもしれない。 可愛い男の子と暴君的なバイセクシャルの中年男、性転換した昔の恋人、殆どのシーンに裸で登場するギャル。登場人物だけ見ると、ものすごく可笑しな作品のようにも思えるが(実際、面白くて笑ってしまう場面も多くあるのだが)、そこにはごく身近なテーマが描かれている。“愛の残酷さと絶望感”…誰しも多かれ少なかれ、味わったことがある筈だ。 フランツはレオポルドを愛し過ぎてしまった。ヴェラもまた然りである。劇中、レオポルドは常に主導権を握っているし、最後まで勝者なのだ。 室内劇であるこの作品においては、全編を通して同じアパートメントの中でストーリーが展開される。登場人物は4人のみ。ヒッチコックの“偉大な試み”を思い出す人もいるだろうが、本作において、この手法は見事に成功していると言えるだろう。 またお洒落なインテリアにも注目。寝室にチューリップチェアがさり気なく置いてあったり、全体に60年代テイストでまとめられた室内は今見ても十分に魅力的だ。 Text : nakamura*UNZIP Copyright (c) 2001 UNZIP |