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1940年---ギリシア・イオニア諸島最大の島、ケファロニア島に戦争の足音が近付いてくる。この島の医師イアンニス(ジョン・ハート)と気丈で美しい娘ペラギア(ペネロペ・クルス)。父親から手ほどきを受け才能を開花させつつあるが、女が職業で身をたてるという選択肢は、伝統と慣習を重んじるこの島にはなかった。逞しい漁師のマンドラス(クリスチャン・ベール)との恋に有頂天だったが、次第に戦争は彼らのすぐ側までやってきた。隣国アルバニアへイタリア軍が侵略してきたのだ。マンドラスはペラギアと婚約を交わしアルバニアへ出兵してしまう。戦場に手紙を送り、彼の帰りを待ち続けるペラギア。しかし彼からの返事はなく過酷な戦況だけが島に伝えられた。
1941年---マンドラスの消息がわからないまま、ペラギアの彼への思いは次第に薄れていった。4月、アルバニアでの戦争は終わった。ギリシアは降伏を余儀なくされた。消息不明だったマンドラスが、変わり果てた姿で突然戻ってきた。彼への思いが薄れてしまった今、ペラギアは戸惑いを隠せなかった。やがてこの島は、イタリア軍とそれを援護するドイツ軍によって占領される。イタリア兵が行進していくなか、敵意に満ちた島民たちの緊迫感をやわらげたのは隊列を率いるアントニオ・コレリ大尉(ニコラス・ケイジ)だった。彼の背中にはなんとマンドリンが背負われていたのである。 イタリア軍将校を宿泊させるよう命令されたイアンニスの家にやってきたのは、あのコレリ大尉だった。初めは敵意を剥き出しにしていた島の人々も、イタリア人らしい陽気さでマンドリンを奏でながら部下達と歌声を響かせる彼らに心を許していった。気性の激しいペラギアでさえも…。ある夜、コレリは彼女に自作の曲を贈る。そのタイトルは“ペラギアの歌”。次第に心惹かれ合うふたり。愛する喜びに満ちながらも、敵兵を愛し、婚約者をも裏切ることによる二重の苦しみに困惑するペラギア。そんな中、婚約者マンドラスは島の解放を目指しパルチザンへ…。 1943年---ムッソリーニ失脚に引続きイタリアは降伏。イタリア兵達は故郷に帰れることになるが、パルチザン軍に武器が渡ることを恐れたドイツ軍は武器を放棄するように要求。武器を取り上げられた4人のイタリア兵が銃殺され、島にはドイツの援軍が次々と送り込まれる。マンドラスは「この戦争では誰を信じるべきか?一つだけ確かなことはドイツ軍だけは信用するな!ってことだけだ。」と、コレリに武器を渡すように迫る。コレリはパルチザンに武器を委ね、共に闘うことを決断する。決戦前夜、悲観にくれるペラギアにコレリの部下カルロが約束する。「俺が必ず彼を守る」と…。 戦いの時がきた。必死の応戦も空しく、イタリア軍はドイツ軍に破れ彼の部隊は虐殺されてしまうが、コレリだけが奇跡的に助かった。カルロが約束通り身を呈して彼を守ったのだ。マンドラスがコレリを発見し、イアンニス医師の家へと運びこむ。医療物資が不足する中、瀕死の重症のコレリを救ったのはマンドリンの弦だった。折れた骨をつないでくれたのだ。ペラギアの手厚い看護で体の傷は次第に回復していったが、心の傷は癒えることはなかった。ペラギアは彼を島から脱出させる事を決意。見送るペラギアにコレリは何かを告げようとするが、ペラギアは遮った。こんな時代においてはどんな約束も無意味なものだと一番知っていたのは彼女自身であったから…。しかし彼女の心は永遠にコレリのもの。再び逢う事はないとしても…。 1947年---ケファロニア島に再び平穏な日々が戻り、コレリへの想いを胸に秘め、医学を志すペラギア。そんなある日、彼女のもとにイタリアからの小包が…。 イギリスでは20人に1人が読んだと言われているほどのベストセラー『Captain Corelli's Mandolin』(1994)を映画化したこの作品。戦争中に本当の意味での同盟を結べなかった、イタリア人とドイツ人との悲劇が実際におこった場所“ケファロニア島”で撮影されている。この小説の人気によってこの島に注目が集まり、ギリシア観光の目玉となりつつあるらしいが、映画化されたことによってさらに注目度がアップすることは間違いないだろう。映像で映し出されたことにより、この島の美しさがいっそう際立っている。 物語の内容としては、タイプが異なるふたりの男性に挟まれ揺れ動き、その末に許されない恋におちたふたりが、時代の流れと戦争によって翻弄されながらも愛を貫く。といった割とよくあるラブストーリではある。が、このストーリーを『恋におちたシェイクスピア』のジョン・マッデン監督が感動の作品に仕上げているし、豪華なキャスティングが見どころ。コレリ大尉役にはおなじみのニコラス・ケイジ。ペラギア役は、ただいま人気上昇中のスペイン女優、ペネロペ・クルスが演じている。最近では6月に日本公開の『すべての美しい馬』、2001年9月公開のジョニー・デップとの共演作『ブロウ』など、続々と話題作に登場。彼女の美しさによって、この作品の感動が増しているに違いない。そしてペラギアの父、イアニス医師の台詞も重要。恋から愛に変わっていくさまを鋭くついている。 背景に流れる音楽もまた良し。『恋におちたシェイクスピア』『リトル・ダンサー』の音楽を手掛けたスティーヴン・ウォーベックがこの作品にも携わっている。美しいメロディで、恋するふたりの切ない想いを表現した“ペラギアの歌”をはじめとして、効果的な音楽でこの作品を盛り上げてくれている。 UNZIPの連載コーナー“月刊映画日誌・銀幕鼠”VOL.11でもこの作品について述べられているが、セリフがすべて英語なのは確かに気になる。イタリア語が微妙に混じったりするから、一層気になるところではあるが、この作品の場合はイギリス文学が原作なので英語のセリフの方が作者のニュアンスが出せるのかな…。 まあ先にも言った通り、ストーリー的にはありがちだが、ほんとに美しいペネロペ・クルスと音楽、景色に彩られたこの作品。ラブストーリーに浸りた〜い。という気分の人にはお勧めの1本! Text : Kyoko Copyright (c) 2001 UNZIP |