[おいしい生活] Small Time Crocks

2001年10月20日より恵比寿ガーデンシネマにて公開

監督・脚本:ウディ・アレン/製作:ジーン・ドゥーマニアン/製作総指揮:J・E・ボーケア/共同製作総指揮:ジャック・ロリンズ、チャール・H・ジョフィー、レッティ・アロンソン/共同製作:ヘロン・ロビン/撮影:チャオ・フェイ/編集:アリサ・レプセルター/衣装:スザンヌ・マッケイブ/キャスト:ウディ・アレン、トレーシー・ウルマン、ヒュー・グラント、エレイン・メイ、トニー・ダロウ、ジョン・ロヴィッツ、マイケル・ラパポート、エイレン・ストリッチ/2000年/アメリカ/95分

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ウディ・アレン演じるレイは天才気取りの間抜けな泥棒。口の悪い妻、フレンチー(トレーシー・ウルマン)とニューヨークのこじんまりとしたアパートでつつましくも幸せに暮らしていた。ある日、レイがベルギー製のチョコレートをお土産に帰ってくる。なにか下心があるのでは?と疑うフレンチー。案の定、レイは間抜けな仲間たちと共に、“完全無欠”な銀行強盗を計画していた。銀行の並びにあるピザ屋が空き店鋪になっていることに目をつけ、店の地下からトンネルを掘って銀行の金庫室に侵入するという、大胆なものである。しかし、間抜け揃いのこのメンバーでは肝心のトンネル掘りはなかなか進まない。そのうちフレンチーがカモフラージュのために始めたクッキー屋が大繁盛。店の前には長蛇の列が出来、マスコミまでが取材に来て、たちまちニューヨークで話題の店になってしまった。そんな時、見当はずれな方向に掘り進めたトンネルが完成。レイたちが大喜びで飛び出すと、なんとそこはブティック。その上、警察官にみつかってしまった!…だが彼は逮捕が目的ではなく、分け前を寄こせと言う。銀行強盗は失敗したのに?…だが彼の狙いはこのチンケな犯罪計画の分け前ではなく、クッキー屋の方だった。「みんながハッピーになれる解決策がある」という警察官の口から飛び出した言葉は“フランチャイズ”!この一言で、レイとフレンチーは大富豪に。かくして二人の“おいしい生活”が始まったのだが、このちぐはぐな夫婦にとって、成金生活は思いがけずラクではないものだった…。

レイとフレンチー、この二人の対照的なキャラクターが軽妙に描かれていて、とにかくテンポがよくて飽きさせない。 二人の夫婦善哉的掛け合いも絶妙である。「貧しい時は仲良くしていたのに、お金を手にした途端に夫婦間に亀裂が生じた」なんて設定はいくらでもありそうだが、楽しくて洒落たコメディに仕上げているところはさすがウディ・アレン監督だ、と言えるだろう。この映画には強い強い批判精神もなければ毒もなく、多少強引ながらもハッピーエンドにおさめるあたり、古きよきハリウッド映画の様で、「面白かったなぁ」と純粋に思える作品であった。また“俳優”ウディ・アレンのコメディアン振りも素晴しく、とぼけた主人公レイを愛すべきキャラクターとしている。


Text : nakamura [UNZIP]



ウディ・アレン監督31作目にして「地球は女で回ってる」以来3年振りの主演となる本作は、ドリームワークスが全米配給して大ヒットとなったコメディ。「あなたはアメリカ芸術において重要人物ですが、それは名誉ですか、足枷ですか?」という記者からの質問に「まったくなにも感じない。僕の影響なんてどこにも見当たらないからね。スピルバーグの影響ならそこら中に見えるが。」と答えたウディ・アレン。そのスピルバーグ率いるドリームワークスがアート路線の本命として配給した映画なのだが、なぜかコメディ映画として仕上がった…。とのこと。ただ、ウディ・アレン監督のファンとしては、“お金があっても幸せにはなれない”というテーマが押し付けがましいのは無視したいところかもしれない。お金持ちごっこに嫌気がさして、コーラと化学調味料がたっぷり入ったテイクアウトのチャイニーズボックスを食べながらテレビを観てるあたりはウディらしいと言えるが。

とはいえ、夫婦漫才のような二人のかけあいや軽い語り口やちょっぴり織りまぜてある風刺などで楽しめる作品だあることには間違いない。ウディ・アレンの映画を観たあとに感じるニューヨークに対する憧れは今回は湧いてこなかったが…。

Text : ogura karuvi



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