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ミシェル(ジャン=ユーグ・アングラード)は妻と別れてから一人暮らすパリのアパルトマン兼クリニックで、精神分析医をしている。自身も幼い頃に目撃した両親のセックスがトラウマとなっており、初老の精神科医の元へ通って心を癒す日々を送っていた。患者の一人、美しい人妻のオルガ(エレーヌ・ド・フジュロール)は盗みと暴力でしか悦びを得ることができない。アブノーマルで扇情的な彼女の魅力に、ミシェルは強い反発を覚えながらも抗えないでいた。ある雪の日、いつもの様に夫の暴力を受ける快感について身悶えながら語る彼女の告白に耳を傾けているうちに、ミシェルは深い眠りに落ちてしまう。夢の中でオルガの首を絞めるミシェル。歓喜の声をあげ、やがて息絶えるオルガ。…目を覚ますと、そこにはオルガの死体があった。果たして自分が殺してしまったのか、それとも…?診察室のドアの向こうには次の患者が待っている。焦るミシェルは、とりあえず死体をソファーの下に隠すのだった…。
「ベティ・ブルー 愛と激情の日々」(1986)で強烈な印象を残したジャン=ジャック・べネックスの8年ぶりの新作。雑誌などで、青の中に赤が印象的に使われた不思議な世界観漂うビジュアルが気になっている人も多いのではないだろうか。全体が透明な青(ベネックス・ブルーと呼ばれているらしい)で覆われたような映像、登場する小道具の赤や黄色。この夢の様に美しい色の世界で、些細な出来事から突然事件に巻き込まれた男が災難に遭い、やがて真相が解明されるというサスペンス仕立ての映画。だが死体の始末にまつわるエピソードがあまりにも面白く、ちょうどヒッチコックの「ハリーの災難」を思わせる受難コメディの様でもある。ベネックスと聞いて暗くて難しい映画を想像していたところ、いい意味で期待を裏切ってくれた。劇中で主人公の恋人、エレーヌの作品として登場する絵はベネックス自身の筆によるもの。絵画を愛するベネックスならではの美術作品とも言える程美しい映像と、そこで繰り広げられる可笑しなストーリーはフランス映画が苦手な人にもおすすめ出来ます。 Text : nakamura [UNZIP] Copyright (c) 2001 UNZIP |