『息子の部屋』ナンニ・モレッティ監督、来日記者会見レポート!

2001年12月6日(木)ホテル西洋銀座にて『息子の部屋』原案、脚本、主演を務めたナンニ・モレッティ監督の来日記者会見が行われました。

ビデオカメラを撮りながら取材人の前に現れたモレッティ監督。おちゃめな監督の姿に会場は和みムード満点。今回の作品は、「家族」がテーマということもあり、監督の「家族」に対する考え方などの興味深い質問もでました。

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【Q:質問/N:ナンニ・モレッティ監督】

Q:今回の作品は、過去の作品とは雰囲気が異なるものに仕上がっていますが、過去の作品は監督の等身大を主観的にとらえたものが多いと思います。今回は、ご自身から切り離して客観的に主人公を演出したものに仕上がっていると思いますが、映画をつくる上での監督の考え方、監督の気持ちの変化をお聞かせてください。

N:過去の作品で等身大の自分を、とありました。しかし実は、等身大の自分、自分自身を演じているようであってあれは演技であり、本当の自分自身ではありません。映画で作り込んだものです。よって逆に他の人が観るよりは、より客観的に自分の作品観る事ができます。作品が変わったということを言われることがありますが、時が経つに連れていろんなことが変わっていくので、人間として環境としてのスタンスも変わっていったのかもしれません。

Q:監督にとって「家族」、「愛」とはどういうものですか。

N:「家族」と「愛」についてということで、随分、重い質問ですね。現在、家族のあり方は多様化しています。一緒に住むという住み方も多様化していて、いろんなタイプのさまざまな異なった家族が存在しているのが実情です。今回取り上げたのは、父と母、両親と子供という非常にクラシックな家族ですが、どちらにしても現在の家族のあり方が多様化している中で「息子の部屋」を描いています。この家族は、まとまっていて非常に仲がよく、一緒に過ごす時間が多い。このようなタイプの家族が今現在、何%いるのか、統計をとったことがないのでわからないですが、そんなに理想的にみえる家族ですら、いつも一緒にいても家族のメンバーが踏込むことのできない、侵すことのできない部分がある。自分自身の秘密の部分をもっている、そして分かり得ない部分をもっている、そんなところも「家族」の姿なんだ、というところを描きたかったのです。

Q:イタリア国内での、この作品に対する反応はいかがでしたか?

N:マスコミの中でも色々な反応がありました。今迄の作品と非常に変わった、転換期ではないかという人もいれば、一貫性があるという人もいる。実はこの作品にあまりに浸りきっていたので、自分自身で客観的には判断できないのです。

Q:カンヌ映画祭パルムドールを受賞したお気持ちをお聞かせください。

N:この賞は、映画界の中でも最もプレステージが高いものと私自身、思っておりますので非常に嬉しかったです。私の仕事、私の長年の強力スタッフの仕事が公式の場で認められたということでひと際、喜びは大きかったです。

Q:今回の設定で「息子」が死ぬということにした理由は何ですか?

N:自分でも説明できません。ただ頭の中に4人家族、子供が二人、姉と弟、息子が突然死ぬということが頭に浮かんだだけなんです。

Q:次回作のテーマを考えていますか?

N:いろんなアイディアは浮かんでいますが、映画化するまで煮詰めていません。


Text : imafuku [UNZIP]

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