|
||
タイ、バンコク。身寄りがなく生まれつき耳が聞こえないコン(パワリット・モングコンビシット)はたった1人で生きていた。ある日、コンは勤務先の射撃場で殺し屋のジョー(ピセーク・インタラカンチット)に出会う。コンの視線に気付いたジョーは持っていた銃を差し出して、撃ってみる様に促す。一発でターゲットを打ち抜くコン。やがてジョーはコンを殺し屋に育て上げ、一緒に仕事をするようになる。数年後、コンは凄腕の殺し屋になっていたが、ジョーは利き手を負傷し、リタイアしていた。恋人のオーム(パタラワリン・ティムクン)さえ遠ざけて荒んだ生活を送るジョーは、「恩を受けたらそれに報いろ。煮え湯を飲まされたら復讐だ。」とコンに言い聞かせる。そんな中、熱を出して薬局を訪れたコンは美しい少女フォン(プリムシニー・ラタナソパァー)に出会う。お互いに惹かれ合う二人だったが、コンは自分が殺し屋であることを彼女に告げることが出来ないでいた。だが事件は起きてしまった。夜の公園でフォンを襲った強盗をコンが打ち殺してしまったのだ。冷酷に人を殺すコンにショックを受けたフォンはその場から逃げ去ってしまう。コンを想いながらも心を開くことができないフォン。そして、ジョーとオ-ムにも悲劇は起きていた…。
タイの映画、という事で実はあまり期待せず、何の予備知識もないまま観てしまったのだが、この作品はドラマとしてもアクションとしても楽しめるものであった。少年(青年?)マンガを映画にした様な感じ、と言えばよいだろうか。例えば池上遼一の描くアジアンマフィアの世界。美しくて切ない物語、どこか影のある登場人物達、汚れのない少女…。ダイナミックでスタイリッシュな映像表現や編集の手法にもそれは感じられた。監督のオキサイド&ダニー・パン兄弟はCMの編集の経験が豊富だというが、秒数に限りのあるCMと紙面に限りのあるマンガはどこか通じるところがあるのだろうか。 また、登場人物1人1人のキャラクターが実によく描かれてる。例えばジョー。劣等感を抱きながら荒んだ暮らしを送る彼だが、なぜそうなのかという点には断片的にしか触れていない。しかし、観る者は彼の背景にあるものを感じることができる。それは恐らくピセーク・インタラカンチットという役者の力量によるものなのかもしれない。(ちなみに彼はちょっと小室似。髪型のせい?)他の登場人物に対しても同様で、見事なキャスティングであったと言えるだろう。タイで5本の指に入るというモデルのパタラワリン・ティムクンも難しい役、オームを存在感たっぷりに演じている。最後になってしまったが、主役のコンを演じたパワリット・モングコンビシットはこの作品が映画デビュー。キュートな風貌と切ない役どころにファンになる女の子も多いんじゃないかな。 Text : nakamura [UNZIP] Copyright (c) 2001 UNZIP |