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ひびの入ったガラスがパリ−ンと割れる。悲鳴を上げて逃げまどう女性。凶器を持った覆面男が迫る----ってなスプラッタ・ホラー映画に友達がビビってる横で、つまんなそうにしているルビー・ベイカー(リリー・ソビエスキー)は16歳の高校生。ただガラスの割れる音にだけ首をすくめる。親にバレないように夜遊びするスリルを愉しんでいる年頃だ。メリル・ストリープを親の世代の演技派アイドルとしてホラー女優と比較してみたり、自分達の親の世代が一番うるさいって思ったりしている。親バレして外出禁止令をくらった友達に同情しつつ、その夜も友達の車でLAの街をナイト・クルージング。深夜に家から離れた所で降ろしてもらい、煙草の臭いをスプレーで消して帰宅すると、家の前にパトカーが。バレたかと思って「家出じゃなくて……」と言い訳しようとした彼女に、警官は両親の訃報を伝えるのだった。結婚20年記念のディナーの帰りに、マルホランド・ドライブで事故死したらしい。葬儀の後、残された彼女と11歳の弟レット(トレバー・モーガン)は、遺産管財弁護士ベグレーダー氏(ブルース・ダーン)の助言で、10年前まで隣人だったグラス夫妻(ステラン・スカルスゲールド&ダイアン・レイン)に引き取られる。彼らの家は、マリブの一等地に立つガラス張りの驕奢な豪邸だった。高級車送迎サービス会社を経営するグラス氏も、女医である夫人も一見リッチでいい人なのだが、なにかがルビーに警戒心を呼び起こす。両親の死の後遺症か、慣れない他人との生活のせいか……。成人すれば莫大な遺産が入ること、もしグラス夫妻とうまくいかなければ孤児院に行くしかないことも、彼女を不安にさせるのだった。弟のレットはN-64やプレステを与えられてあっさり馴染んでしまい、ルビーは転校した学校で妙に悪ぶってみせたせいで、後に自らを追いつめることになる。義父は心配してくれているのか、監視しているのか? 思春期の少女の妄想めいた疑惑は、やがて確信にかわってゆく……。
小粒だがかっちりと作られたミステリー・サスペンス。よくできた火曜サスペンス劇場ヤング版って感じ。突然孤児となった16歳の姉と11歳の弟。恵まれたかに見えた新生活での微かな不安が、ミステリ小説の懐疑&探偵パターンと相似であるってアイデアはちょい面白い。ハロルド・ブルームの『ハムレット』論(96年に出た「Blooms
Notes: William Shakespeare's 'Hamlet'」かな?)がチラっと引用されて、この映画が「復讐劇」であることを示唆する仕掛けが劇中にあるのだが、高校の宿題レポートにそんな引用元チェックが入ったり、それを養父がさらっと引用したりっていうのは、アメリカ人の教養を示すのか、映画の作り手の見栄なのかが気になったりして……。 |