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物語の最初の語り手は20歳の青年テル(窪塚洋介)。子供の頃マンホールに落ちて頭に怪我をし、それ以来、帽子を取ると引きつけを起こす。両親は早死にして祖母と二人暮らし。毎日、祖母の経営するコインランドリーに出掛け、掃除をしたり洗濯物が盗まれないように見張る仕事をしている。ランドリーに来る素人写真家の主婦、連戦連敗のボクサー、愚痴の多い老人などとの交流が、彼の世界の全てだった。ある日、乾燥機に置き忘れてあった服を届けようと追いかけたテルは、その服の持ち主、水絵(小雪)に部屋へと通され、じっと手を握られるという経験をする。ランドリ−に戻ると、また負けたらしいボクサーが乾燥機の中で籠城しているところだった。一晩つき合ったテルの前に、水絵が現れる。「バス停まで送って」と頼まれ、川沿いの土手の上で、水たまりを谷に見立てて飛ぶ彼女。そして彼女は行ってしまった。ランドリーの乾燥機に、落ちない赤い染みがついた1着の服を残して……。やがて祖母が詐欺にあって、コインランドリ−は売りに出されることになる。テルは居場所を失ってしまう。
故郷の町に戻った水絵は語る。24で東京で独り暮らしを始め、妻子持ちの郵便局員とつき合うことになり、破局を迎え、盗癖がエスカレートしていく……。宝石、口紅、本、服、テレビ……とりつかれたように盗んだモノを、郵便ポストに捨てる日々は、捕まるまで続いた。実家の美容院で、高校生の妹に疎まれ、肩身の狭い思いをしながら暮らす彼女は、せっかく得た地元工場の仕事に向かう途中に郵便配達夫を見かけて、トラウマが再発してしまう。彼女もまた居場所を失っていた。 テルは、何度も洗った彼女の服を届けようと、ヒッチハイクをしながら遠い町を目指す。途中で知り合ったサリー(内藤剛志)という謎の男に事情を話すと、変な逸話と共に「そういうのアイってんだ。覚えておけ」と教えてもらうテル。「困ったことがあったら来い」と名刺をもらって、美容院に辿り着くが、彼女はいないという。妹が居場所を教えてくれて、ついに水絵と再会し、一緒に暮らす二人。ふと、祖母に教えてもらった「口笛の上手な若者の話」の続きが思い出せなくて、家に電話したテルが聞かされたのは、訃報だった。墓参りの後、二人はサリーを訪ね、彼の仕事を手伝うことになる……。三人での少し不思議な、でも楽しい暮らしは、だが長くは続かなかった…… 。 ちょっと長いけど、静かな余韻が気持ちいい、ピュアなラブストーリーである。主演は『GO』でキネマ旬報主演男優賞など数々の賞を得た窪塚洋介(他に『溺れる魚』『ピンポン』など)。ちょうど今、TV『ロングラブレター〜漂流教室』で生徒に「アサミィ」って呼び捨てにされがちな(笑)若い先生を演じている。この『ロングラブレター』も妙なのんびり感漂うサバイバルもの、でも泣かせるって特異な世界を作ってるんだけど、映画『Laundry<ランドリー>』も何だか変な「世界」を持った、でも優しい現代の寓話としてオススメしたい映画なのである。 |