|
||
何かの施設の中を逃げる3つの人影。そのうちの一人の子供が、放射性廃棄物のマークのついたドラム缶カプセルに詰め込まれて、唯一の脱出口らしき海に投棄され、残りの二人は追っ手に撃たれてしまう。海を漂うカプセルはやがてすぐ沈み、脱出して海面に出た少年は、遠くに島影を見つけ、必死でクロールで泳いでゆく……。辿り着いた島には海亀が産卵する砂浜があり、椰子が生え、カエルやサンショウウオや南国型のカタツムリがいるようなジャングルがあった。いつの間にかたくさんの果物が側にあり、それを食べながら渓流を散策する少年は、そこで男女の住民に出会う。「ヨーマ、ホギララ(ホギララへようこそ)」と彼を抱きしめた女性はキララ(緒川たまき)、青年はカヌララ(松尾光次)と名乗り、少年の記憶がないことを知ると、ヌラ(落合扶樹)と名前をつけて、自分達の家へ連れてゆく。魚獲りのうまい少年キプノル、ヌラを警戒している金髪ブリーチ少年マイトム、可愛い幼女エヴィ(坂野真弥)など、島の住民は皆、子供だった。ホギララ(大地の神)を芝生を円形に刈った場所で崇め、日本語の幼児語をベースにしたような造語ホギララ語を使い、狩猟生活を送る彼らは幸せそうだったが、また流れ着いた少女ミラン(嶋沙耶香)が来た頃から、不穏な気配が忍び寄る。そういえば皆、身体のどこかに傷のようなものがあり、ふとしたことで死んでしまうようなのだ。キララはカヌララの子を身籠もっていたが、ヌラに「今度はあなたの子供を生む」と言う。また島には誰にも見えない不思議な青年、カヌララに似た精霊ヨマ(松尾雄一)というのがいるらしい……。ヌラが島の生活に慣れた頃、武装した黒服の侵入者達が姿を現す。ホギララの子供達は闘うことを余儀なくされる。闘いの後、父(SUGIZO)と母(原日出子)の記憶を取り戻したヌラは、死を目前にしたカヌララから「日本を消せ」という謎めいた言葉を聞き、自分がやるべき事を果たそうとするのだった。
近未来、孤島に流れ着いた少年が、子供達だけのコミューンで理想的な自然生活を送ることになるのだが、実はその背後には日本の危機管理能力の無さや旧い差別構造なんかがあって、子供達は苦しみの末に新しい生き方を選んだのであった……っていう話。「GOMI」というキイワードで、ちょっと社会批判してみましたって感じの寓話的SF映画である。海に沈む夕陽など、奄美大島あたりの自然の風景が美しい。本編内で説明を極力省き、ラストに状況説明のテロップを配してあるのも面白い。劇中で「大地の神」とされる「ホギララ」とは、「ホープ・ギフト・ラブ・ライフ」に由来するらしい。あ、坂本美雨の歌う主題歌はとても素敵である。 で。文句を言う。はっきり言えば、まず現実の放射能被爆者を愚弄するような幼稚な思いつきが何より許し難い。そして“癒し”の孤島楽園幻想も考えが浅すぎるし(奄美観光ロケ目当てとしか思えない)、微塵の人類学的考証すら無い(俗流の民俗学ネタは若干あるけど)薄っぺらな「ごっこ」じみた狩猟採取生活・未開/原始信仰の描写も酷いし、エコロジー思想や差別論や反日思想の骨子を、根本的に誤解しているとしか思えない浅はかなメッセージ部分は有害ですらある。などなど、ダメダメな所が多々目につく映画だと個人的には思うんだけど、今、現在の日本でこのような若い(幼い?)映画が成立してしまうということへの苦い驚きを“現象”として観察できるという意味では、なかなか貴重な“近未来SFマンガ風”の寓話ではある。ぜひ観てツッコミを入れて欲しい(なんで原色のファション・ショーやねん、とかどうやってブリーチしてんねんとか細かいツッコミどころ多々あり)。いや、中学生が撮った自主映画なんかと比較するなら、撮影技術や編集などテクニカルな面、あるいは一部の役者の巧さなんかは賞賛できるだろうし、まかり間違って感動するかもしれないから、その時は僕の見解なんて無視していいからね(笑)。しかしこれは岩井俊二あたりの悪い影響なのかもしれん、ということは逆に岩井派の宮台真司あたりがホメるかもなぁ……。この映画の「間違っている部分(そして救済できそうな良い所)」を的確に指摘できるかどうかで、クリエイターも批評家も、その資格を問われるはずだと、僕なんかは思うんだけどね。 原案・監督は民放やVシネで演出・製作を手がけてきたという雑賀敏郎(映画デビューは『クリスマス・イヴ』)。出演は『ぷ』『サムライ・フィクション』『ジュブナイル』などの緒川たまき、『いきすだま〜生霊』出演の松尾雄一・光治兄弟(日韓混合ロックバンドY2Kのメンバーで、兄弟でのユニットDOGGY BAGとして音楽活動を続け、TVドラマにも俳優として出演している)、ヌラを演じた弱冠11歳の落合扶樹(TV「あっぱれ さんま大先生」に出てた。『アイ・ラヴ・フレンズ』『赤い橋の下のぬるい水』に出演)など。また本編にチラッと出演しているSUGIZOが、主題歌「Cosmo Miu Miu」(坂本美雨)をプロデュースしている。ソニーやENBUゼミナール(演劇ぶっく社主宰)の協力でギャガが始めた日本映画の新レーベル「ガリンペイロ」の第1回作品とのこと。 Text:梶浦秀麿 Copyright (c) 2001 UNZIP |