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舞台は1951年、アメリカ西海岸の小さな町。
ある日海岸にひとりの男が打ち上げられる。 その姿を見て驚き、狂喜する町の人々。 その町では誰もが彼を知っていた。 美味しい朝食を出すダイナー。古ぼけたアンティークショップ。家庭的な病院…。あらゆる場所で彼は大歓迎を受ける。喜びに涙する老いた父がいて、美しい恋人がいて、幼なじみがいる。彼の存在は、朽ちかけた町に戻ってきた希望そのものだったのだ。けれども彼には自分が誰なのかわからない。事故のショックですべての記憶を失ってしまったのだ。
「僕は本当に“彼”なのか」…そんな戸惑いと不安が人々の善意と愛情によって少しずつ溶け、彼はこの町での生活を愛し始める。そして、今はすっかり荒れ果てた、町でただ一つの映画館「マジェスティック」でもう一度映画を上映しようと奔走しはじめる。彼の父親がオーナーをつとめる「マジェスティック」は、かつて町の繁栄と幸福の象徴だった。そして町が一体となって映画館の再建に成功した時“事件”は起こる。それは、自分が誰かさえわからない ピーターを否応なしに“過去”に引き戻す出来事だった… 。 ジム・キャリーといえば、<コメディ>という概念を覆す本作は、ドライブの途中事故を起こし、記憶を無くした男が自分を取り戻し、過去と対面し、向き合っていく姿を描いている。とにかく、ジム・キャリーの演技がすばらしい。自分が誰かもわからず、戸惑いながらも、ローソンの田舎町で人々の優しさに触れ、苦悩していく姿を自然に演じている。都会では失われつつある、人と人との触れ合い、優しさ、そして、臭いようだが愛は素晴らしい…と感じてしまう。親が子を思う気持ち、愛する恋人への思い。当たり前の、でも忙しい日々の中では忘れてしまいそうになる気持ち。そんな優しさが溢れている。場面、場面で流れるジャズも必聴です。思わず、涙してしまった私。でも、ゆったりとした気持ちでコーヒーでも飲みながら見たくなる映画です。 Text:Kaori Nakazawa Copyright (c) 2001 UNZIP |