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同じアパートに住む3人の男たち。元ボクサーの岩野(池内博之)とクールな自由人の浅田(忌野清志郎)と元教師の丸(松尾スズキ)は定職にも就かず昼は適当なアルバイト、夜は『殴られ屋』をやりながら気ままなその日暮らし。このままでいいとは思っていないけれど、何がしたいかわからない…。行きつけの屋台でおでんをつついてはダラダラと過ごす、変わりばえのない毎日。そんなある日、サエない<チキン・ハート>な3人の住むアパ−トが取り壊される事になり、彼らの気ままなその日暮らしに変化が訪れる。あらゆる事から逃げていた彼らはそれぞれの道を歩き出そうとするのだが…。
端的に言ってしまえば“よくある話”なのだが、その“よくある話”が退屈なものになっていないのは、演出や役者によるところが大きいと言えよう。暗くなりがちなテーマなのにもかかわらず、きっちり笑いもとれる作りになっている。脇を固める役者もしみじみと味わい深い芝居を見せてくれるし、(最近私の中では岸部一徳がかなりキてる。)バンドネオンの音色を使った音楽もヨーロッパ映画のようなひなびた匂いを醸し出していた。 元ボクサーの岩野は、何かにつけ「いや、俺はいいよ…」と、自信がなくて実に煮え切らない男である。演じる池内君の迷いに満ちた<チキハ>芝居。その俯いた表情は年下好きのおネエ様方には胸キュンものかもしれない。実際劇中でも誘惑されたりしてるし。ボクシングの動きも特訓しただけあってなかなかサマになっていた。 浅田役の忌野清志郎ははっきり言って芝居はビミョーな線なのだけれど、なぜか存在感がある。やはりここは流石というべきか。浅田はやってる事はいつもハチャメチャなのだが、不思議な魅力のある人物だ。ちょっと謎めいた雰囲気があり、発言にも妙な説得力があって、そんな彼を岩野は慕っていたりする。その浅田のハチャメチャぶりは劇中あちこちで見る事ができるのだが、浅田がティッシュ配りをするシーンはかなり笑える。あんなアナーキーな配り方は見た事がない。このバイトをする人は真似しないように! 丸役の松尾スズキの芝居は実に見事だった。丸はちょっと(というか、かなり)痛ーい人で、毎日占いで見たラッキーアイテムを身につける事を常としている。みなさん御存じかと思うが、占いのラッキーアイテムって大抵ロクなものがない。そんなもんを身につけるものだから、いつも丸のファッションはヒジョーにちぐはぐな事になっている。頼みの綱の叔父夫婦にもジャマにされ、見込みのない合コンに張り切るがウザがられているのに気付かないし、ホント痛い人だ。ちなみに口癖は「まいったなぁ〜」。思わずこっちが「まいったなぁ〜」と言いたくなる、そんな<チキハ>な男であった。 余談だがこの映画、個人的には大きな発見があった。3人がたまり場にしている屋台に現れては「ここで営業してはイカーン!」とイチャモンをつける警官役。どこかで見た事があるのだが…?と、彼が現れる度にモヤモヤした気持ちになり、おかげでおでん屋のシーンは微妙に集中できなかった。だから最後のクレジットは見逃す訳にはいかなかった。そう、彼の正体は芦川誠だった。子供の頃テレビでみていた『翔んだカップル』の勇介君だよ〜!(轟二郎や柳沢慎吾も出演してたっけ…)懐かしいぜ〜!とちょっとトクした気持ちで試写室を後にしたのだった。 Text:でこ助 Copyright (c) 2001 UNZIP |