[歌え!フィッシャーマン] Heftig og Begeistret/Cool & Crazy
2002年夏休み、シネクイントにて公開

監督:クヌート・エーリク・イェンセン/製作:トム・レムローヴ/撮影:スヴァイン・クローヴェル、アスラウグ・ホルム/出演:ベルレヴォーグ男声合唱団 ほか
(2001年/ノルウェー/105分/配給:東北新社)

∵公式サイト

北極圏に位置する人口1200人の小さな漁業の町ベルレヴォーグで、1917年に創設された伝統ある男性合唱団。そのメンバー達が人生を豊かに、楽しく、ユーモラスに過ごす日常を通し、壮大な自然と見事に調和した絶妙なコーラス、人生の誇り、仲間達との友情を描いたドキュ・ミュージカル。

寡黙で頼り甲斐がある車イスの指揮者、数学の才能を持ちながら漁師になった男、各地を転々と暮らしベルレヴォーグに落ち着いた男など、96才と87才の兄弟を中心とした男性ばかり30名の合唱団。彼らはカフェを経営し、定期的に開かれる歌のリハーサルを楽しみながら、毎日の生活を送っている。そんなある日、合唱団はロシアの都市ムルマンスクのコンサートに招待されることになる。バスに乗り込み会場に到着すると、予想を大きく上回る観客が詰めかけていた。しかし、本番直前のリハーサルは、これまでで最悪のものだった。大勢の観客を目の前にし、彼らの緊張は隠せない。頼りがいのある指揮者でさえ黙っている。ナーバスになるメンバー達。緊張が頂点に達した時、いよいよ出番が…。彼らは舞台に上がった。


「おいおい、これは日本映画か!」ってな感じで荒れ狂う海のシーンからこの映画は始まる。ホント冬の日本海みたいだ。そして聞こえてくるベルレヴォーグ合唱団の太く重い声。なんだか重苦しい感じの作品かな?と不安になりつつあった。確かに場所はノルウェーの最北端。そりゃ外で歌でも歌うもんなら眉には雪も積もるよ、気持ちも沈むよ、なんて思ってしまう。が、ここに住むオッサン30名はそんな感情はちっとも持っちゃいない。ここに登場するオッサンは皆この地を愛している。古き良き時代をユーモラスに語る姿は微笑ましい。特に過去の女性をことを語っているシーンのオッサンの表情は自信に溢れている。若い頃はプレイボーイで鳴らしたという彼らだが、どこの国でもいつの時代でも若い男の考えることは同じで笑えてくる。ドキュミュージカルというだけあって、団員が歌うシーンが中心となるわけだが、特にラストの町の中心で吹雪の中熱唱するシーンはぐっとくる。この町が好きでその熱い思いを歌にこめて表現するその姿は、少なからず我々にただ生きることへの喜びを伝えてくれるだろう。

Text:Atsushi Yamahira

Copyright (c) 2001 UNZIP