[なごり雪]
2002年9月よりスバル座他全国ロードショー公開

監督:大林宣彦/脚本:南柱根、大林宣彦/音楽:學草太郎、山下康介、伊勢正三/製作:ピー・エス・シー、TOPエンタープライズ/出演:三浦友和、ベンガル、須藤温子、宝生舞、細山田隆人、反田孝幸、長澤まさみ、津島恵子、左時枝ほか
(2002年/日本/111分/配給:大映)

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【STORY】
妻としこに逃げられ、一人ぼっちで自殺願望と戯れながら、もうすぐ50歳を迎えようとしている梶村祐作のもとに、28年ぶりにかつての友、水田健一郎から連絡があった。「妻が、…雪子が死にかけている。…祐作、帰って来てくれないか、臼杵(うすき)に。」
雪子…雪などめったに降らない温暖な町に住みながら、「雪が降ると奇蹟が起きる」と信じ、雪を愛し待ち焦がれ続けた美しい少女。臼杵…祐作が少年時代を過ごし、水田や雪子と出会い、そして別れた古い城下町。祐作は会社を2〜3日休み、臼杵ヘ帰ることを決意する。古里に戻った祐作が見たものは、全身に包帯を巻かれ、やがて訪れる死を静かに待つ、雪子の姿だった。祐作の脳裏に雪子を見た最後の日が蘇る。雪子の手から剃刀を奪おうとする水田、手首を血に染めて「違う!」と叫んだ雪子。あの夜、少女に何があったのか…? 逃れようの無い重い現実を前に、蘇る青春の追憶。…祐作に恋していた雪子。その気持ちを知りながら深く傷つけた自分。雪子に恋していた水田。東京の大学へ向う祐作をホームで見送り「春にはきっと帰って来て」とせがんだ雪子。約束を守れなかった自分。雪子は俺が守ると言った水田の姿。…人生に行き詰まった男が、「なごり雪」の切なくも美しい旋律の中で、自分の青春と向き合い、静かに再生してゆく 。


【REVIEW】
大林監督の作品の中では1番好き!と言ってよいくらい、お気に入り。大林監督の作品で気になるところ…省略し過ぎ、と言うと言い過ぎかもしれないけど、例えば『ふたり』や『時をかける少女』で見られた映像表現の荒さ…まずそれが無かったところがよかった。そしてストーリー。人を愛することに臆病だった自分が情けなくなるぐらい、「好きな人を思い続ける」ということや「人への思い」が強く心に響いた映画だった。その感情を増幅させるかのように、「なごり雪」の歌詞がセリフに嫌味なく引用されているところがまたよかった。例えば、雪子が「梶村さんに私のこと、去年よりずっと綺麗になったと言わせてみせる…」という様な事を言うシーンがあるが、これは「いま春がきて 君はきれいになった 去年よりずっと きれいになった」という「なごり雪」のサビの部分、という具合だ。

東京に住んでいると、人の関係って希薄だな…と感じることもあるが、「そんなことはない!」と勇気を与えてくれる、素晴らしい1本。人の温かさを感じたい!という人は是非。余談だが、スタッフ・ロールで、祐作・水田・としこ・雪子が4人背中合わせになって、一人、一人離れていくシーンがあるのだが、最後に雪子のアップシーンを長く撮っているところ、あれは昔の大林監督チックな演出が出ていて嬉しかった。プレス資料には“新しい「大林映画」は臼杵から始まる”なんて書いてありましたがね。

Text:ツッツー

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