[ラストシーン] LAST SCENE
11月9日(土)よりテアトル新宿にてロードショー

監督:中田秀夫/製作:一瀬隆重、Mathew Jacobs/脚本:中村義洋、鈴木謙一/出演:西島秀俊、若村麻由美、麻生祐未、麻生久美子、ジョニー吉長、山本亘、小林隆、笹野高史、大杉漣、竹中直人 ほか
(2002年/日本/1時間40分/配給:オズ、オムロ)

【STORY】
1965年。皇太子(現在の天皇)のご成婚、東京オリンピックにより、加速したテレビという新しいメディアの台頭が、日本映画界に暗い影を落し始めた頃のことである。とある映画撮影所のスタジオでは、『愛の果て』撮影の合間に主演のスター女優・吉野恵子の引退の記者会見が行われていた。スターの地位の移ろいやすさを懸念した恵子は、結婚・引退という道を選んだのだ。スタジオでは、共演のスター俳優三原健が、ひとり憤慨を隠しきれず、荒れていた。コンビを組んできた恵子の引退により、三原は次作の主演を若手にさらわれたのだ。スタッフに当たり散らし、控え室に戻った三原を待っていたのは、妻の千鶴の姿だった。酒でうっぷんを晴らす三原を優しく諭す妻にも、三原はつらく当たり追い返すのだった。その直後、スタジオに千鶴の訃報が届く…。

2000年。同じスタジオ。現在はテレビ・ディレクターが人気テレビ番組の映画化『ドクター鮫島 THE MOVIE』を撮影中である。映画の現場に不慣れな監督に違和感を感じながらもスタッフたちはなんとか撮影を続けている。小道具のアシスタントとして撮影現場をかけまわるミオも夢を抱いて映画界に入ったものの、不条理な現実を目の当たりにして意欲を喪失気味だ。そんなとき、ひとりの老人が急に降板した病床にある男の代役として小さな役を演じるためにやってくる。それはかつてのスター三原健の変わり果てた姿だった。妻千鶴の死後、三原は酒に溺れ、仕事を失い、いつの間にか映画界からも、世間からも忘れられた存在となっていた。なぜ今再び、三原は撮影所に現れたのか。スター時代の三原を知らないミオは、この不思議な老人の存在に、次第に心を動かされていく…。

【REVIEW】
何かを始めるきっかけは人それぞれ。「このことにかけてはホント好きで…」「人の誘いで…」「何となく…」。まあ、上げればきりがないが、それを続けて行くことは難しい。少しづつ嫌な思いをすればするほど、「辞めようかな…」って思いが浮かぶものだ。では「なぜ、続けているの!?」って聞かれた時、あなたはすぐに言葉に出来るだろうか!?

この映画は映画界の中の人間模様を交え、「思い」に対して昔と今とで描かれている。熱き思いと冷めた思い…ひとつのものを皆で作る時、この「思い」に温度差があってはなかなか上手くいかないものだ。でも、そんな違和感を抱えている道具係のミオの、不器用ながらに今を変えてやる!って行動や、ミオのやる気にさらに火を付ける老人・三原が熱く思い出を語るシーンには、見ている自分まで心が熱くなった。もし今「仕事に飽きて…」というふうに戦意喪失中の人や、逆に「これやってみようかな!?」って意欲に燃えている人には、ぜひ見てほしい作品だ。

Text:ツッツー


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