[水の女]
2002年11月9日(土)よりシネマライズにて公開

監督・脚本・編集:杉森秀則/撮影:町田博/プロデューサー:甲斐正樹、根岸洋之/衣裳:北村道子/出演:UA、浅野忠信、HIKARU、小川眞由美、YUKI、大浦龍宇一、江夏豊
(2002年/日本/115分/配給:日活/宣伝:東北新社)

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(c)アーティストフィルム/日活

【STORY】
関西の小さな町で、代々続く銭湯「ひかり湯」。そこの一人娘が涼(UA)である。涼のあだ名は「雨女」…その身に何かあるときは、空は決まって雨になる。週末に結婚を控えたある日、幸せが手から滑り落ちるように許嫁と唯一の家族である父親が同時にこの世から去ってしまう。その日もやっぱり雨が降っていた。

涼は今や天涯孤独の身。しかし、それは完全な自由でもある。銭湯を売ってもいい、他の場所で新しい生活を始めるのもいい、あるいは死を選ぶのも…。涼はしばらく銭湯を閉めて、旅に出ることにする。幼い頃から憧れていた富士を間近で見る旅。富士の麓を歩いているうちに、涼は森の奥深くから聞こえてくる音楽に吸い込まれるように中へ入っていく。そこは、「樹海」の森だった。その森の奥で、風のように自由に生きる女、ユキノ(HIKARU)と出会う。ユキノの事を色々聞きたがる涼に、「初めて会った人と仲良くしたかったら、名前も過去も、何も聞かないことや」とユキノは答える。2人は森を出て、湖畔を旅しながら仲良くなり、涼は過去の記憶や心の傷を癒し、新しい人生を歩む力を得る。

旅から戻った涼は驚愕する。見知らぬ男・優作(浅野忠信)が家に上がり込み台所で悠然と食事をしていたのだ。驚きを隠せないものの、彼の不思議な魅力に惹かれた涼は、亡父の仕事場であった銭湯の釜場で働いてみないかと誘いかける。火を見ると落ち着くという彼にとって、願ってもない安住の場所。こうして「ひかり湯」は再開されるが… 。

【REVIEW】
主人公“水の女”涼を演じるのは本作が映画デビューとなるUA。監督の杉森秀則(彼も本作が映画デビュー)が最初からUAをイメージして脚本を書いたというだけあって、涼は、ファンが「UAってこういう女なんじゃないか、こういう女であって欲しい」と願うUA像そのもののようにも思える。UA自身も、この映画に出演を決めた理由を「涼をほかの人がやるのは嫌やった」と語っているが、『水の女』はまさにUAのための映画なのだ。共演の浅野忠信と一緒にスクリーンに並ぶと、それだけでも絵になるし、銭湯「ひかり湯」は特別な空気が漂う場所になる。ズルいキャスティングだなぁと思うが、静けさと激しさの両面を持つ“火の男”は浅野忠信がやはり適役。個性的な役者たちがまわりをかため、UAのデビュー作としてはとてもよい出来だ。

気になるのは無駄なシーンが多いところ。ぼんちおさむが海辺で吠えるシーンは、なぜ必要だったのだろう?とか、なぜその場面だけコント風だったのか?とか、いきなり別世界に迷いこんだピエロのように哀れに見えたぼんちおさむのことが気がかりでならないのだが、ぼんちおさむはさておき、設定は面白かっただけに、少し残念なところだ。

Text:nakamura [UNZIP]


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