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愛と!笑いと!驚愕の!トッド・ソロンズワールド炸裂! 【STORY】 物語は、「フィクション」「ノンフィクション」の2部構成となっている。 ●フィクション '80年代中頃のニュージャージー。女子大生ヴァイ(セルマ・ブレア)には同級生で脳性小児マヒ(CP=Cerebral Palsy)をもつ彼氏マーカス(レオ・フィッツパトリック)がいる。ふたりは揃って黒人のスコット教授によるクリエイティブ・ライティングのクラスを受講している。スコット教授は『日曜日のリンチ』という作品でピューリッツァー賞を受賞しながらも、今は大学の教職の身の上だ。ある日のこと、マーカスの作品が教授に酷評されたことがもとでふたりは大喧嘩。むしゃくしゃしたヴァイはその夜バーで教授と偶然出会い、彼の家に行ってしまう。ところが教授にはとんでもない秘密があった…。 ●ノンフィクション 現在のニュージャージー。靴屋の店員として生計を立てているトビー(ポール・ジアマッティ)は、ドキュメンタリー映画作家志望。10代の若者をテーマに作品を撮ろうと、自分の母校を訪ねることにする。そこで出会ったのは、無気力、無関心、勉強はもちろん女の子にもすべてヤル気ナシの落ちこぼれ受験生、スクービー(マーク・ウェバー)。彼に目をつけたトビーはさっそく家族に撮影許可を申し込みに行く。スクービーはユダヤ系の典型的アメリカンファミリー、リビングストーン家の長男だ。家長は堅物の巨漢、次男は花形アメフト選手で学校の人気者、三男は謎の催眠術を操る小5の優等生。エルサルバドルから来た家政婦もいる。撮影は一見順調にすすむようみえたが、一家を待ちかまえていたのは思いがけない災難の連続だった…。 【REVIEW】 『ハピネス』で小児性愛者の分析科医、あまりにも男運がない女、変態電話が趣味のオタク…とどこか1本ネジの抜けたダメ人間たちをダークな笑いと深い愛で描き、カンヌ映画祭批評家賞を始め多くの賞を受賞してしまった、あの天才トッド・ソロンズ監督の待ちに待った最新作。事実と虚構はどう違う? なんていう深淵な問いを投げかけながらも、人種問題、階級、障害者、といったタブーを扱う。 「フィクション」の舞台は'80年代中頃。マイケル・ジャクソン、ライオネル・リッチーをはじめとする有名アーティストが集まって“We Are The World(USA FOR AFRICA)”を歌い、ベネトンが「世界のすべての色」というコピーで、ブラック、ホワイト、イエローのモデル達が登場するメッセージ性の強い広告を打ち出し、平和や平等に若者の関心が高まっていた、まさにそんな時期だ。主人公のヴァイはメッセージ入りのTシャツを着て、「差別なんかしないわ」と繰り返し自分に言い聞かせている。そんな彼女の偽善を叩きのめし、強烈な毒気でツッコミを入れるソロンズ。舞台を現代に移した「ノンフィクション」でも彼の毒気は強くなるばかり。観客にバツの悪い思いをさせる天才でもあるソロンズの本作は、ひとり、もしくは気心の知れた友達と観るのをおすすめする。思わず笑ってしまった後に人格を疑われることになりかねないからだ。 Text:nakamura [UNZIP] Copyright (c) 2001 UNZIP |