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【STORY】
若手映画監督フランソワ(主人公)は、新作映画製作のための資金集めに奔走していたある日、街角で女優を志す女性リュシー(ヒロイン)とすれ違った瞬間、恋に落ち急速に愛を深めてゆく。やがてフランソワは、新作映画のヒロインにリュシー以外考えられないと、脚本をリュシーに渡すが、彼女も、初めて合格した芝居のオーディションと資金がうまく集まっていない映画のヒロインのどちらを選ぶべきか思い悩み、最終的にはフランソワとともに映画をつくることを決断する。新作映画のタイトルは「残忍な無邪気さ」。ヘロインを題材にした話。なかなか資金が集まらないなか、フランソワのかつての恋人キャロルの弟アレックスから紹介された初老の男シャスが、資金提供してくれることとなり、アムステルダムで新作映画の撮影が開始するが……。 互いに求め合う愛、映画への情熱、ヘロイン。この3つの要素がやがて、フランソワとリュシーの二人に「矛盾と苦悩」を抱かせてゆくこととなる。 【REVIEW】 ゴダールからカラックスまで世界中の映画作家から圧倒的な賞賛を浴びる、フィリップ・ガレル監督待望の最新作。この作品は、ガレルと今は亡きヴェルヴェット・アンダーグラウンドの歌姫・ニコとの恋愛を描いたとされている。深い黒とピアノの音ではじまるこの映画は、レイトショー公開ということもあり「シュールな大人の恋愛」をモノクロの世界で綴っている。自分には経験のない、深く愛し合う様は憧れると言うよりも少々重苦しさを感じたが、これが愛の国フランスの大人の恋愛…と客観的に眺めてしまった。 主役となる男女、フランソワとリュシーを演じた、メディ・ベラ・カセム(フランソワ)とジュリア・フォール(リュシー)の、互いに映画初出演というこの作品は、初出演ゆえに若い男女の直線的で止まることなく突き進む恋愛模様を、リアルに演じていたのかもしれないと思う一方、フランソワに制作資金を提供する初老の男シャスを演じるベテラン俳優、ミシェル・シュボールの大げさではない、微妙で意味深な表情が話の所々で何気ないカットとなり「何かが起こる…の?」と感じさせられ「若さと熟年のかけひきめいたもの」に、惹きつけさせられた。 純粋に恋愛映画として観るか、私のように勝手な解釈をして観るかはお任せするとして、この作品を観る夜は、いつもより気分を落ち着かせて、ひとりBARで映画の余韻にひたることをおすすめする。 Text:kameda [UNZIP] Copyright (c) 2001 UNZIP |