[スパイダー・パニック] EIGHT LEGGED FREAKS
2002年12月14日より銀座シネパトスにてロードショー公開

監督:エロリー・エルカイエム/製作総指揮:ローランド・エメリッヒ/製作:ディーン・デブリン、ブルース・バーマン/出演:デイビッド・アークエット、カーリー・ワーラー、スコット・テラ、スカーレット・ヨハンソン、リック・オーバートン
(2002年/アメリカ/1時間39分/配給:ワーナー・ブラザース映画)

(C)2002 Warner Bros. & Village Roadshow Films(BVI) Ltd All rights reserved.

【STORY】
アリゾナの片田舎に有る鉱山街、その近くを走るトラックの荷台から産業廃棄物を積め込んだドラム缶が転げ落ちてしまった…。後日、そのドラム缶は街の女、保安官サム・パーカー(カーリー・ワーラー)によって回収された。しかし、時を同じくして養殖場の蜘蛛達に川から取れた餌を与えたところ異常に成長し始めるのだった。やがて巨大に成長した蜘蛛達は養殖場を破壊して炭坑の中に逃げ込む。始めは家畜類を襲うだけだった蜘蛛達がその毒牙を街の住民達に向けるのに時間はかからなかった。

死んだ炭坑主の父親から炭坑を受け継ぐ為に、長らく街を離れていたクリス・マコーミック(デビット・アークエット)が帰ってくる。クリスはかつてサムと恋仲であったが些細な事が原因で街を出てしまっていたのだ。かつての関係を修復しようと不器用ながらもサムにアタックするクリスであったが巨大化した蜘蛛達に邪魔されてそれどころではなくなってしまう。街中を暴れまくる巨大蜘蛛の大群に追われた人々は散り散りに町外れのモールへ逃げ込む。しかし、巨大化したタランチュラの攻撃を受けてあえなく地下へ。しかしそこは炭坑---巨大化した蜘蛛達の巣---へと続いているのであった…。街の住民は生き残りを賭けて最後の戦いに挑む。クリスもまた愛するサムの為、単身蜘蛛の巣へ飛び込んで行くのであった…。

【REVIEW】
最近なんだか増えてきた、50年代、60年代にささげるオマージュ的な作品、本作もそんな一作であるが、平たく言うと笑っちゃうくらいのB級映画って奴ですかなぁ。蜘蛛が巨大化して人間を襲い出したらどうなるのか? そんな気持ち悪い事を考えていた昔の人達の妄想を現代のVFXで見事に描き出しているのである。ご存知タランチュラを筆頭にトタテグモ、コガネクモ等がスクリーン一杯に映し出される様にきっと背筋がゾゾッとすることだろう。

しかし、小さいのになんだか見ているだけでゾゾッっとする蜘蛛も、巨大化させてみると意外とユーモラスに見えてしまうのである。その為に単純にスケールアップするだけでなくそれぞれの蜘蛛毎にディテールアップを施してそれらしさを出すように苦労したそうだ。確かに戦車位もある巨大なタランチュラと言ってもなんだか蜘蛛特有のゾゾッっとする感じがいまいちしないものである。これらの蜘蛛を動かすのに担当スタッフは本物の蜘蛛をじっくり観察してその動きをシミュレートしたそうであるが、単に気持ち悪さを現すのではなく、どこかコミカルな動きさえもしてしまう蜘蛛達に、独特の息吹を感じる。

この作品のコンセプトはフィルムメーカー達が幼い頃に夢中になった作品達へのオマージュであり、基本思想はただ単に怖がらせるだけでなく、どこか笑ってしまう様な楽しさも併せ持つ事である。確かに床の上で滑って転ぶ蜘蛛や勢い余って扉に激突してしまうどこかお間抜けな蜘蛛達には苦笑してしまった。そう言う遊び心が古き良き時代の映画の持つ醍醐味だったのかもしれない。また画面の感じやセットについてもどこか古めかしい感じで纏められていて一見すると昔の映画? と言う気もしなくもないかな? と言うところが拘りの証か!

もう一つの魅力は単なるモンスターパニックものに終わらせない、登場人物達の人間関係であろう。シングルマザーの女保安官サムと父親の遺産を引き継ぐ為に帰郷したマイクは束の間の再会を噛み締める間も無く巨大化した蜘蛛達の騒動に巻き込まれる。かつて恋仲だったサムとマイクの関係を軸に、モンスター映画に付き物の女子供、賢いサムの息子のマイク(スコット・テラ )とちょっとおませな娘のアシュリー(スカーレット・ヨハンソン )、利権を牛耳ろうとする悪徳市長やその息子がアシュリーに言寄ったり…と類型的なキャラクター配置では有るが、それぞれのキャラクターが無難な活躍をするのである。

製作総指揮は『GODZILLA』や『インデペンデンス・デイ』等で大作監督のイメージのあるローランド・エメリッヒであるが、監督は脚本も手がけた若手の新進気鋭、エロリー・エルカイエムに任せている。山椒は小粒でもぴりりと辛いと言うようなアイデア勝負の作品をVFXでリアルにかつ大胆に、モンスター・パニックと人間ドラマを上手く融合させて仕上げた佳作である。

Text:harry


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