『猟奇的な彼女』主演チョン・ジヒョン来日記者会見
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 韓国で爆発的な大ヒットを記録し、話題を呼んでいた『猟奇的な彼女』がついに日本公開となった。昨年のゆうばり映画祭、10月のクァク・ジェヨン監督来日、12月の“キョヌ”役チャ・テヒョン来日に続いて、日本での公開日である03年1月25日(土)に合わせて、ついに主演女優チョン・ジヒョン(全智賢)のプロモーション来日が実現した。来日記者会見は1月22日(水)15:00よりセルリアンタワー東急ホテルB2のボールルームにて開催。
 登場した彼女の印象はまず「ほっそ(細)ーっい」。プレスによると172cm48kgってことなのでまさにモデルさん体型、映画では中肉中背に見えてたけど実物はサラサラのストレートヘアでスラっとしたスレンダー美女、もとい美少女であった(まだ21歳だしね)。ちょっとビックリ。近寄りがたいような清楚な感じで、ノースリーブの薄い水色のハイネック・セーター(左脇に黒いV字が並んだアクセント)に赤系のパンプスが隠れる長さの細身のジーンズ、銀の腕時計と右手の指に一つだけ指輪をする、という比較的シンプルでカジュアルなスタイルは、無造作におでこを出す感じで分けた長い黒髪を強調しつつ、「素材で勝負」ってな誇りすら感じさせる自然さを醸し出していたのだった。さて、ではさっそく彼女の初来日記者会見の模様を再現してみよう。



司会:ハアハア…(走ってきたらしい)本日はチョン・ジヒョン来日記者会見に御来場いただきましてありがとうございます(拍手)。拍手ありがとうございます。ちょっと時間が押してしまって申し訳ありません。映画『猟奇的な彼女』はいよいよ今週末公開されます。ギリギリなんですが、主演のチョン・ジヒョンさんがプロモーション来日してくれました。プロモーションとしては初来日になるそうなんですが、みなさんどうぞいろいろ質問していただきたいと思います。ちなみにチョン・ジヒョンさんなんですが、今さっき、今日のお昼11時くらいに日本に到着されたばかりです。その後、こちらのホテルに監禁状態になっておりまして、あまり日本を見ておりません。それから『猟奇的な彼女』について簡単にご説明させていただきます。この映画は実話と言われておりまして、韓国のインターネットにこの物語が掲載されておりました。大学生の青年の恋愛の物語です。それが話題になって、小説になって、そして映画化されました。チョン・ジヒョンさんが大変愛くるしい姿でスクリーンに登場し、第39回大鐘(テジョン)賞、韓国のアカデミー賞に匹敵しますね、その賞の主演女優賞と人気賞を獲得しております。韓国で映画製作者がキャスティングしたい女優ナンバー1、また観客動員力ナンバー1女優、こういう形でも話題になっている、まさにトップ女優さんでいらっしゃいます。それではさっそく御紹介しましょう、チョン・ジヒョンさんです、どうぞ(拍手と共にチョン・ジヒョンさん登場)……それではまず御挨拶からお願いします。

チョン・ジヒョン:「(日本語で)こんに,ちわぁ、私はチョン・ジヒョンです。どうじょ宜しくお願いします」(拍手)

司会:実はチョン・ジヒョンさん、一本映画を撮り終えたばかりなんですよね。撮影が終わったばかりという、その最新主演作『四人用の食卓(仮)』について、簡単にお話していただけますか?


チョン・ジヒョン:「ジャンルはホラー、スリラーに入るんですが、ちょっと辛い過去を抱えた女性の役どころで、ジョン・ウォンという男性に会って、少しづつ心を開いていくんですが、結局は悲劇的な結末を迎える、というお話です」

司会:はい、わかりました。今まさに韓国で引っ張りだこの女優さんでいらっしゃいます。ちなみにこの『猟奇的な彼女』なんですが、もともと原作のインターネット小説が話題になって映画化されたんですが、実際にこの小説については、キャスティング以前からご存知でしたか?

チョン・ジヒョン:「もちろんキャスティングされる前から知っていました。韓国では特に若い人達から大人気のインターネット小説で、本当にどんどん読者が増えていくような小説でした。私も目にしていましたし、非常に楽しく読ませていただいた一冊です。その後に映画化が決まり、キャスティングされて、とても光栄に思いました」

司会:ありがとうございます、それでは質疑応答に入りたいと思います。

Q1:楽しく拝見させていただきました(すかさず「カムサムニダー(ありがとうございます)」とチョン・ジヒョン)。今回、強烈なキャラクター、役柄なんですが、役作りにおいて苦労された点は? あと泥酔してゲロを吐くシーンがあるんですが、そういったシーンなどに抵抗はなかったどうかお聞きしたいんですが?

チョン・ジヒョン:「私自身は本作に出るまでは、どちらかと言うと韓国では大人しいイメージ、静かな女優のイメージ、あるいは清純なイメージを持たれていました。ですからシナリオをいただいた時には、全く違ったキャラクターだったので、実のところプレッシャーも感じました。シナリオを読んでみたら、吐くシーンもありましたし、それから私は実際に男性を殴ったことは一度もなかったんですが、映画の中には殴るシーンもたくさんありましたので、プレッシャーを抱えてのスタートでした。そしてまた悩んで決めたキャスティングだったんですが、でもシナリオがとにかく気に入りましたので、出演を決めてからは、そういったプレッシャーはまったく無くなりました。この映画は実話が元になってますので、作者にお会いして話を聞いたりしているうちに、彼女というキャラクターは、自分が信じて役になりきっても大丈夫だ、という風に決めてからは、逆に自分との共通点を探したりして、苦労したというよりは楽しく撮影できました」

Q2:今のお話にもあったんですが、今回のヒロインは、ジヒョンさんとどういった所が似ていますか? あと映画では本当に凄まじいキャラクターなんですが、ジヒョンさん御自身はキレるとどうなりますか? あるいは酔っ払ったりするとどうなりますか?

チョン・ジヒョン:「そうですね、共通点というお話の前に、まず私はお酒が飲めないので、当然酔ったこともないですし、呑んで酔った後どうなるかということは一度も経験したことが無いんです。でも共通点として挙げられるのは、これまでは違った職業の役柄を演じることが多かったんですが、今回はほとんど実年齢と近い役柄でしたので、感じ方ですとか、それから学生という立場とか、そういったところも似たところがありましたので、演技をする上では非常に助かりました。これまで自分と違う職業だったり設定年齢が違う役柄を演じる時には、非常になりきるまで時間がかかることもあったのですが、そういった点では、この“彼女”という役柄には共通点が沢山あった役柄と言えます。それからキレたことということですが(苦笑)、“彼女”というのは(私と同じ)最近の若い世代の女性ですから…。まあ時々ですけどそんなこともありますね(笑)」

Q:ということは呑んで酔っぱらう演技はどこから引き出してきたんですか?

チョン・ジヒョン:「そうですね。酔っぱらったことはなくても、周囲で酔っ払った人をよく目にする機会がありますので、そういうことを思い出したりとか、またこの映画はコミカルな部分がたくさん含まれている作品ですから、そうしたコミカルな部分の一つだな、という気持ちで演じました」

Q3:男女の立場が逆転しているのが凄い新鮮に映ったんですが、この映画の公開によって韓国での恋愛事情がなにか変わったとか、そういうようなことはありますか?

チョン・ジヒョン:「そうですね、私は普段は仕事も結構ありますし、この映画が若い人の恋愛観にどのような影響を与えたかは、あまり気づかずに過ごしていたんですが、マスコミ報道ですとか、いろんな人に聞いた話では、この映画が出た後、女性が主人公になったりとか、女性のキャラクターが以前より非常に活発な女性が多くなったとか、そういった現象が起きているということを伺ったことがあります。そういったことを考えると、一つの文化を先取りしたような気持ちがありますし、そのことについては自負心を持っていますし、非常に気分を良くしています。いずれにしましても、『猟奇的な彼女』がきっかけとなって、恋愛観ですとか男女の立場が変わってきているのは確かなようです」

Q4:アンニョンハセヨ(チョン・ジヒョンもすぐ「アンニョンハセヨ」と返す)。同じ女性として映画を観ていて、凄くすっきりする場面がいっぱいあるんですけれども、チョン・ジヒョンさん自身、演じていて一番すっきりと楽しく演じられたシーンどこですか?


チョン・ジヒョン:「すっきりしたという点では、今おっしゃってくださったように全体的に気分がいい映画になったと思うんですが、特に女性の立場から男性を振り回すようなシーンは、全般にすっきりと爽快な気分で演じることができました。それは韓国の人達もそういったシーンを『とてもいいですね』と言ってくださいまして、まあ特にあげるとしたら、キョヌを殴るシーン、ですとか「言うこと聞かないと、ブッ殺すよ」と脅迫めいたことを言葉にするシーンですとかは、自分でも演じていて、役になりきったのではと錯覚するほど非常に楽しくすっきりとした気分で演じられました」

Q5:この役柄を演じるにあたって、周りの反応とかファンの方の反応はどんな風に変わったか、どんな反応があったか?ということと、その反応をどういう風に感じられたか?というのを教えていただけますか?

チョン・ジヒョン:「この『猟奇的な彼女』は、韓国では本当に多くの方に観ていただきまして、私が演じた彼女“そのもの”がいいですね、という意見がとても多かったんですね。そういった反応を聞きますと、非常に嬉しい反面、ただこれだけで満足していてはいけないな、という気持ちを持っています。もちろん今回はこのような役で、みなさんに好感を持っていただいたんですが、常に違った面を自分としては演じていきたいという気持ちがとても強いので、次の作品も、先ほど申し上げた新作ですけれども、それはスリラーという違うジャンルを選びました」

Q6:アンニョンハセヨ(「アンニョンハセヨ」と返す)。ズバリお聞きしたいのですが、チョン・ジヒョンさんが実際に好きな男性のタイプは? 映画ではキョヌのような男性に惹かれて、最後ハッピーエンドになりますけれども、実際はどうでしょうか?

チョン・ジヒョン:「そうですね(笑)。キョヌも非常に可愛いですし、それから言うこともきいてくれるし、優しくて、とてもいい男性だと思います。最近の韓国の女性に好きなタイプを聞きますと、キョヌのような男性を「欲しい」という表現で、つまり「自分のモノにしたい」という表現で言うことが多いんですけれども、もちろん私もキョヌのような男性も好きですが、どちらかというと個人的には私をリードしてくれるような、とても強い感じの男性、それから自分の主張をはっきり持っている男性が好きですね」


Q7:リードしてくれる男性が好きということなんですが、チョン・ジヒョンさんご自身が、そんな男性にして欲しいことがあったら教えてください。あと先程シナリオを気に入られたとおっしゃっていましたが、一番お気入りの台詞があれば教えてください。「ぶっ殺す」ですか?

チョン・ジヒョン:「もし私に好きな人ができたとしたら、あまり要求はしない、と思いますね。ただこちらの方から逆に、相手の方が非常に楽な気持ちになれるようにしてあげたいな、と思います。そして何をするにしても、常にこちらが要求するのではなくて、常に一緒に何か行動したい、という風に思います。それから好きな台詞なんですけれども……これは最初にシナリオを読んだ時には気づかなかったのですが、実際映画化されて、お客さんの反応を観た時に、お客さんが一緒に涙を流してくれたシーンがあるんですね。それは、山の上で私がキョヌに向かって叫ぶ台詞なんですが、あのシーンで観客の方達が一緒に観てくださって涙を流しているのを見た時に、ああ自分も観客と一体になれたんだという気がしまして……。山で叫ぶあの台詞が一番好きですね」

Q8:アニョンハセヨ! 日本ではここ数年韓国映画がブームなんですが、ジヒョンさんは日本映画を御覧になりますか?もし好きな日本映画がありましたら教えてください。

チョン・ジヒョン:「日本映画はとても好きなのが多くて、面白いなと思う映画は非常にたくさんあります。最近観た作品では、北野武監督の『菊次郎の夏』、ですね。あの作品は最近観た中で本当に良かったです。『HANABI』もとても感銘深く拝見しましたし、(岩井俊二監督の)『LOVE LETTER』も好きな映画の一本ですね。北野武さんは、俳優としてもとても好きな俳優さんです」

Q9:映画の中でキョヌ役のチャ・テヒョンさんは、とてもコミカルで、二人ともとてもいい雰囲気でした。素顔のチャ・テヒョンさんについて、何か印象に残っていることがあればお聞かせください。

チョン・ジヒョン:「チャ・テヒョンさんというのは、実際の姿も非常に面白くて、とてもユーモアもある可愛い方です。以前ドラマでもこの作品の前に共演したことがありますし、所属事務所も同じという事でお会いする機会も多いのですが、本当に愉快な方です。映画の撮影現場というのは、普通『女優が華』と呼ばれて、女優が現場に現れると皆喜んでくれるのですが、この『猟奇的な彼女』の現場だけは反対だったようで、チャ・テヒョンさんが来ると皆喜んでいました(笑)。普段からとてもユーモアがあって、周りの人を楽しませる才能を持っている方だと思います。演技の面でも先天的な才能のある俳優さんだと思いますし、私も今回演技について多くのことを話し合ったりしましたし、彼に助けていただいた部分も非常に多かったですね。本当に素晴らしい俳優さんだと思います」

司会:それではこれを持ちまして質疑応答は終了させていただきます。さ、実はですね、今日はチョン・ジヒョンに会いに素敵なゲストにいらしてもらっています。…それでは本日のスペシャル・ゲストをお呼びしましょう。史上最強の“彼女”と、史上最強の格闘家、夢の共演です。柔道、オリンピック金メダリストであり、現在はプロ格闘家として大活躍中のこの方を御紹介しましょう。吉田秀彦さんです、どうぞ!」(拍手)

総合格闘技デビューから3連勝負けなしの最強格闘家、吉田秀彦さんが劇中のエピソードを再現する形で一輪のバラの花を持って登場。彼女に手渡した。

司会:『猟奇的な彼女』、御覧になって、いかがでしたか?

吉田秀彦:「えー。題名は凄い怖い映画かと思ったんですけど、実際観てみたら、凄いいい純愛の映画で、最後に泣けてくるような感じがしました。とても良かったです」

司会:ありがとうございます。チョン・ジヒョンさんは先程、すごく引っ張ってくださるような男性がお好きとおっしゃってたんですが、吉田さんは連勝続きの格闘家なんですが、こういった男性はいかがですか?」

チョン・ジヒョン:「私をリードしてくださいますか?」

吉田秀彦:「どはーっ照れるなあ(笑)。…よろしければ」


司会:どうですか吉田さん、生でお会いになって。

吉田秀彦:「あのー昨日、ビデオを観させていただいて。その昨日ビデオで観た女優さんが隣にいると思うと、凄い緊張します。また、そういう言葉をかけてもらえて非常に嬉しいですね」

司会:では最後に、吉田さんからチョン・ジヒョンさんに何かメッセージを。

吉田秀彦:「今回、非常にいい映画を観させていただいて、本当にありがとうございました。これからもですね、韓国だけではなく、世界に広がる女優になってもらえればいいなと。僕も影ながら応援していますので、がんばってください!」(大きな拍手)

というワケで、この後、映画『猟奇的な彼女』のイメージで吉田さんを殴るシチュエーションをお願いして、会場はカメラマンの撮影大会に雪崩れ込んでいったのだった。



ちなみに公開初日の1月25日にはシャンテシネおよびシネマスクエアとうきゅうにて、チャ・テヒョンも合流来日しての主演カップルによる舞台挨拶が行われ、立ち見は当たり前、二度目の舞台挨拶が追加されるほどの大盛況だった模様。上映館は2月8日(土)より渋谷ジョイシネマ、お台場シネマメディアージュ、川崎チネチッタ、AMCイクスピアリ16他、全国での拡大ロードショーが決定していて、最終的には100館以上を超える予定とか。“猟奇”フィーバーが日本でも起こりつつある。さあ、まだ観てない人は、この波に乗り遅れるないようにね!



Text:梶浦秀麿
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