[プール] Swimfan
2003年3月22日より、銀座シネパトス他にて公開

監督:ジョン・ポルソン/出演:ジェシー・ブラッドフォード、エリカ・クリステンセン、シリ・アップルビー、ケイト・バートン、ダン・ヘダヤほか
(2002年/アメリカ/1時間25分/配給:20世紀フォックス)

∵公式サイト


(C)2002 TWENTIETH CENTURY FOX
【STORY】
NY郊外の高校生ベン(ジェシー・ブラッドフォード)は水泳部のエース。看護婦の母(ケイト・バートン)との母子家庭で、一時は荒れて「錠前破りの名人」として警察にマークされるほど札付きのワルだったのだが、今は皆が尊敬と憧れの目で見る高校一のスターとなっていた。8日後の大会にはスタンフォード大学からスカウトが来る。彼の心の支えとなってきた恋人のエイミー(シリ・アップルビー)も大喜びで、彼のそばにいるために西海岸の大学への進学を考えていた。そんな時、南部から魅惑的な転校生マディソン・ベル(エリカ・クリステンセン)がやってきた。同級生の暗いオタク君のダンテ(ジェームス・デ・ベロ)の親戚らしく、彼の家に居候している。チェロ奏者の彼女を車で送ってあげたベンは、忘れ物の楽譜を届けにいって食事をすることになる。ちゃんと彼女がいることを話せば、「私もNYに大リーガー選手の彼氏がいる」という彼女。だが夜のプールで「泳ぎを教えて」と誘惑されて、一度だけ関係をもってしまうベン。それは甘い罠だった。「秘密にして」と彼女から言い出したにも関わらず、大っぴらに彼につきまとい、家に押し掛け、いつの間にかエイミーとも仲良くなっている彼女に、戦慄するベン。執拗に電子メールを送りつけてくる彼女を遠回しに、ついに露骨に避けると、彼の親友のジョシュと当てつけるようにつき合い出すマディソン。そしてベンを襲う不幸の数々――バイトしている病院で医療事故が起こってクビになり、エイミーにも浮気がばれ、あげく大会で筋肉増強剤が検出されて退部処分に。さらにジョシュが殺されて、その容疑者になってしまったベンは、ダンテから驚愕の事実を聞くことになる。エイミーや母にも魔の手が迫り、順風満帆だったはずのベンの運命は、大きく歯車を狂わせていく……。

【REVIEW】
イケメン・ヤリチン男は必見の(笑)、怖〜い青春サイコ・サスペンスだ。不良少年から立ち直って水泳という才能で未来が見えたと思っていた男子高校生が、ナイスバディのサイコ女との一度だけの浮気で執拗にストーキングされ、女の歪んだ愛情表現で破滅に向かうって展開が妙にリアル。すっきりしない解決が、後味として苦く残りもするってヤな話(笑)なのだ。ティーンズ版『危険な情事』ってな売りだけど、「影のある体育会系男子」が主役ってのが、はからずして最近の若者映画には珍しい事態になってるのが面白い。いやはや、たいていの映画監督って暗いオタクな青春を送っているので、そういう人達の撮る映画だと、プロム・パーティでも主役をはりそうなこういうスター高校生って、必ず「嫌な敵役」としてしか描写されないもの。だが運動部の花形選手にももちろんその地位にいるためのプレッシャーや屈折があり、「いじめられ、みじめだった」とヒガんでばかりのオタク野郎なんかよりよっぽど大変なんだよって当たり前の話に、ちょっと斬新な視点を感じたワケだ。そんな彼が窮地に陥るのを観て、映画オタクは溜飲を下げるか?っていうと、どうもそうでもないみたい。「イージー過ぎる展開」とか「学芸会レベルの大根演技」とか「テキトーな演出」とか「ラジーな駄作」とかってプレミア5月号で某女性ライターに酷評されてたし。ティーンズ映画に何を期待しているのか謎なんだけど、ま、言いたいことはわからんでもない(でも「最大の見せ場はセックス・イン・ザ・プール」ってのは大嘘だと思うが)。典型的な「サイコ女」としてエスカレートしていくマディソン・ベルって、リアルであればあるほど計画的なのか衝動的なのかわからん性格造型になってて、フィクションとしてはムチャクチャ変だし、ゆえに映画自体が浅い話にも思えるだろうからね。この反「映画オタク」な設定が多くの文化部系ないし帰宅部系映画ファンの反感につながったりするとして、じゃあイケメン・ヤリチン君とか健全な体育会系男子がワザワザこの映画を観るかって言うと「有り得ねーっ」て感じなのが、興行的にはツラいかもなぁ…‥。そういう意味でもなかなか際どい問題作でもあるのだ。観る人の青春時代やら異性経験の差で評価が分かれそう、というかその人の「屈折」度が感想にダイレクトに現れてしまいそうな「踏み絵」映画として愉しめる傑作(笑)、だと個人的には思うのだった。作中で典型的オタクとして描写されるダンテ君が実はキーマンとなるって設定が妙に気にいってる僕はオタクなのか反オタクなのか、はたして??(←いやダメな映画オタクではあるんだけどさ)。

主役ベン役は、『ロミオ+ジュリエット』でレオさまロミオの従僕バルサザーを演じていたジェシー・ブラッドフォード(他に『サイバーネット』『ジャンヌのパリ、そしてアメリカ』『チアーズ!』など)。恋人エミリーを『ロズウェル★星の恋人たち』のリズ役で知られるシリ・アップルビー(他に『殺したいほどアイ・ラブ・ユー』『カーラの結婚宣言』『13F』など)。そして最凶のサイコ・ヒロインであるマディソン役を、『トラフィック』でマイケル・ダグラスのヤク中の娘を演じていたエリカ・クリステンセン(他に『バンガー・シスターズ』など)が「能面」演技で怖〜く迫る。あ、ダンテ役のジェームス・デ・ベロは『アメリカン・パイ』や『クライム+パニッシュメント』『最‘新’絶叫計画』なんかに出てたのだった。水泳部コーチ役を名優ダン・ヘダヤが演じてるのも注目か。監督は、『人生は上々だ!』『M:I-2』などで俳優としても活躍するジョン・ポールソン。オーストラリア出身の若手有望株だとか。

Text:梶浦秀麿


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