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【STORY】 マシンが人類を動力源として支配する世界。人々の精神は仮想世界「マトリックス」に閉じこめられていた。トーマス・アンダーソン(キアヌ・リーブス)はモーフィアス(ローレンス・フィッシュバーン)の導きで真実を知り、救世主「ネオ」として迎えられる。そしてトリニティー(キャリー=アン・モス)の愛情を支えに覚醒し、マトリックス世界での超人力を身につけた。 その後、マトリックスからの人類解放は進み、地底都市「ザイオン」を拠点に戦いが続いていた。そこへ殺戮マシン「センティネルズ」の大軍が迫る。ザイオン滅亡まで72時間。事態を打開するため、モーフィアスはマトリックスへの進入を決意する。「救世主がマシンとの戦いに決着をつけてくれる」という予言を信じて。しかしネオは不安を覚えていた。真実を探るほどに不吉な前兆が見えていたのだ。それでもネオはモーフィアスに従い、トリニティーとともにマトリックスへと乗り込む。しかし3人の前には強敵たちとの激しい戦い、そして予想外の決断と真実が待ちうけていた…。 【REVIEW】 「この映画を観るべきか?」と聞かれたら―――「観る価値はある」と答えたい。ただし「次回作の『レボリューションズ』も観なければならなくなるが」。 理由は簡単。確かに『リローデッド』単体で一つのエピソードは終わっている。しかし、それを包む大きなエピソードは完結を先送りされたままだ。「いいところで中断してまた次回」。連作前提の作品だから当然の展開ではある。 もっとも、単体でも見応えは充分だ。特に多くの人が期待するであろう、第一作から進化したアクションの数々。シリーズ独特の映像美はさらに研ぎ澄まされ、格闘に剣闘にカーチェイスにと、派手なシーンが連続する。ネオが空を飛び、銃弾を止めるのは当たり前。前作で明かした「この世界は仮想空間」という手の内を逆手に、「あり得ない」描写がエスカレーションしていく。この開き直りと徹底は、いっそ爽快といえるだろう。 とはいえ、そうした「超絶映像」に観客の目が慣れているのも事実。実際、前作で感じたインパクトには及ばず、不満を覚える向きもあるかもしれない。だが、それは比較の対象が異なるからだ。前作は既存の映像表現との格差を知らしめ、その高レベルな前作と本作が比較される。いうなれば映像表現の「頂上決戦」。それを満喫するには観る者も「お目が高い」必要がある。わずか数秒のカットに費やされた膨大な労力・技術・想像力…。ぼんやりと観る暇はない。まさに最初から最後まで「目が離せない」作品だ。 また、シリーズのもう一つの魅力、神話・伝承・思想といったアカデミックなモチーフも健在である。ネタばらしになるため詳細は避けるが、一点だけ述べておく。前作の主軸は「ネオの復活」に象徴される、キリスト教の救世主物語であった。そこに本作では、ニーチェの「永遠回帰」を想記させる「反復」のモチーフが登場する。「未来永劫、同一のものが同一のままに繰り返す」という永遠回帰。ニーチェはインド思想に通じており、その輪廻転生の世界観から永遠回帰の着想を得た、ともいう。さらに彼は「反キリスト」を標榜した思想家でもあり、現代の「差異と反復」思想のルーツでもあった…。このモチーフの遷移はなかなか示唆に富む。となると、三作目『レボリューションズ』ではどうなるのか? これはやはり最後まで、観ずにはいられないようだ。 Text:Masato YOSHIKAWA Copyright © 2003 UNZIP |