[ファム・ファタール] Reign of Fire
2003年8月23日より全国東宝洋画系にて公開

監督:ブライアン・デ・パルマ/出演:レベッカ・ローミン=ステイモス、アントニオ・バンデラス、ピーター・コヨーテ、エリック・エブアニー他
(2002年/アメリカ/配給:日本ヘラルド映画)

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【STORY】
ゴージャスな装いのセレブたちで賑わうカンヌ映画祭の会場から385カラット、1000万ドルのダイヤモンドが盗まれた。大胆な手口で宝石を盗んだ女は仲間を裏切って逃走、ひとりアメリカへ飛んだ。数年後、女は大使夫人としてパリに舞い戻る。彼女を狙った、たった1枚のスクープ写真。それが衝撃の物語の幕開けだった…! 過去を隠し、まったく新しい人生をスタートさせた自分を守るため、彼女は全力で運命に立ち向かっていく。あるときは上流階級の淑女の顔。あるときは男を挑発する小悪魔として…。

【REVIEW】
ブライアン・デ・パルマ監督が今回手がけた作品は、一人のファム・ファタールの物語。ファム・ファタールとは本来男にとっての“運命の女”という意味らしいが、本作ではもっと広い意味で、彼女に関わる人々にとっての“運命の女”ととれる。とはいえ、翻弄された男たちにとってみればただの“悪女”なのだろう。しかし、そんな悪女を魅力的に映す監督独特の演出は本作でも健在で、あちこちに散りばめられたメッセージに加え、俯瞰からのショットや主人公の視点で映すカメラアングルが、ぐいぐいと観客をスクリーンに引きずり込んでいく。オープニングへのこだわりも相変わらずだ。

主演はもとトップモデルのレベッカ・ローミン=ステイモス。彼女の顔はもちろんのこと、名前を聞いてもピンと来る人はまだ少ないと思う。『Xメン』を観たことがあるなら、全身真っ青のミスティークを演じた彼女と聞けば、え?あの人はこんなに美人だったの?と驚くだろう。真っ青ながらも見事なボディラインを見せつけてくれた彼女は、本作でも露出度高め、まさに体当たりでロール役を演じる。そんな、ある意味“肉体派”の彼女だが、素晴らしいスタイルもさることながら、本作では演技にも注目したい。時にはワイルドに、時には弱々しく、そして時にはエレガントに演じ分ける彼女の技量はなかなかのもの。今後の活躍が楽しみである。


音楽には『スネーク・アイズ』で一緒に仕事をした坂本龍一と再びタッグを組んだ。物語の最初と最後で印象的に流れる「ボレロ」に良く似た曲(その名も「ボレリッシュ」)は、監督の依頼で作られたという。似たようなフレーズが何度も繰り返されるこの曲が何を意味するのかは、物語の最後になってその輪郭をあらわにする。ちょっとベタな気もするが、これほどまで明確にメッセージを含んだ曲もありそうで無かった。

少しずつ変わりながら繰り返されるメロディ、一瞬という名の時を収めた壁いっぱいの写真、そしてデ・ジャ・ヴュな感覚といった“時”がキーとなっている本作。したたかに強く生きるファム・ファタールは男だけでなく、“時”までもを魅了してしまう。見終わった後にすっきりとした気分で劇場をあとにすることが出来たなら、ファム・ファタールの素質があるかもしれない。

Text:うたまる


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