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家族崩壊の危機をシニカル・ユーモア感覚で描く傑作ヒューマン・コメディ 是枝裕和プロデュースとか宮迫映画初出演とかはこの際どうでもいい、観よ! 【REVIEW】 しかし題名のセンス悪過ぎ、ロゴも悪趣味だし……と、実は観る前はかなり文句タレ状態だった。が! 観終わって泣き笑い顔になってる僕。いい映画だ。女性監督(ってのは性差別だと思うが、ならではの人間観察力が凄い)西川美和28歳の、堂々たるデビュー作。参りました! 本作は地方都市、というか立川市近郊(多摩都市モノレールが、映画の中をさりげに印象的に走るのだ)を舞台に、とある「家族の肖像」を描くヒューマン・コメディである。(偽装)出勤する父。惚けた祖父の介護を当たり前のようにする母。生真面目に小学校教師をしている娘は、ボンボンだが優しい同僚と結婚間近。もう一人、途中まで香典泥棒としかわからない男がいる。彼らは一堂に会したある時点で、一気に「崩壊」へと追い込まれる。見栄や世間体や誠意や意地が渦巻き、身内ならではの愛憎が噴出する、絶妙な台詞で展開する心理劇がなんとも深い。 さて。劇中に登場する、過失に見せかけた近親殺人と、返すメドなき巨額の借金と、連続香典泥棒と、婚約不履行と、見栄と善意の嘘と、嘘つき呼ばわりと、身内の犯罪の告発と、いったいどれが“最も重い罪”なのか? 巧みに配置された出口無し=解決不可能な状態に対する、虚をつくような幕切れの軽やかな魅力を味わった後で、この映画が宙吊りにする“家族的問い”の意外な重さを、ぜひ劇場で味わって欲しい。 蛇足。蛇苺=有毒説は俗信だが、甘味は無く、ぶっちゃけ不味い。 Text:梶浦秀麿 Copyright © 2003 UNZIP |