[アマロ神父の罪]
2003年10月11日より銀座テアトルシネマにてレイトロードショー

監督:カルロス・カレラ/脚本:ビセンテ・レニェロ/エグゼクティブ・プロデューサー:ラウラ・インプリアレ/出演:ガエル・ガルシア・ベルナル、サンチョ・グラシア、アナ・クラウディア・タランコン、アンヘリカ・アラゴン、ルイサ・ウェルタス、ダミアン・アルカサル 他
(2002年/メキシコ/118分/配給:ソニー・ピクチャーズ
エンタテインメント)

∵公式サイト

【STORY】
新人神父アマロはメキシコのとある小さな町の教会に見習いとして派遣される。野心に燃え従事するアマロ。そんな彼の敬虔な姿に神の姿を見出した信仰心の厚い少女アメリアは、次第に心惹かれていく。町に滞在してしばらくすると、アマロは教会の様々な裏の出来事を知ることになる。思い描いていた理想と現実のギャップに悩むアマロ。そしてアメリアへの想いを押さえることが出来ず、ふたりは肉体関係を結ぶ。しかし、その先に待ち受けているのは幸せな未来ではなく、厳しい現実と数々の問題だった…。

【REVIEW】
『アモーレス・ペロス』『天国の口、終りの楽園』で多くの女性ファンの心を掴んだガエル・ガルシア・ベルナルの新作『アマロ神父の罪』は、今までの活動的な雰囲気とは少々趣を変え、敬虔な神父役で登場する。2003年のアカデミー外国語映画賞にノミネートされたので、そのタイトルを耳にしたことがある人も多いことだろう。

新人神父のアマロは見習いとしてメキシコの小さな町の教会に派遣され、志も高く教会の仕事に従事していくが、教会を中心とした裏の出来事を知るにつれ戸惑いを覚え始める。そんな折りに出会った信仰心の厚い16歳のアメリアの姿に心を奪われ、二人は結ばれていく…のだけど、その先の展開は、女性と男性で鑑賞の視点が大きく違ってくるのではないだろうか。同じ男性としては、アマロの取った行動は決して感情移入できるものではない。もちろん、知的で美しいアメリアを愛する気持ちや葛藤に苦しむ心の内はおおいに判るけれど、聖職者としての野心を捨てきれず、体裁だけ整えようとする姿はただの無責任でエゴの強い奴にしか映らない。そして、アマロがそういった態度を取れば取るほど、アメリアの姿が痛々しいまでに清らかに見えてくる。

そうした禁断の深い愛に陥る悲しい物語が描かれる一方で、人間や社会の二面性をシニカルに描いた作品ともとれる。表向きは敬虔な神父が愛人を囲ったり、麻薬組織の資金洗浄に手を貸したり、新聞のゴシップ記事を圧力でもみ消したり、逆に悪い奴らのはずであるマフィアたちが情に厚いように描かれたりしているのだ。本人たちにはそれぞれ言い分があり、正しいと思って、もしくは思いこんで行動している。しかし、決して良くない行為だったとしても、それらが100%悪とは描かれていない点が本作の深みにもなっているのだと思う。

メキシコ、アメリカではその内容から上映中止を求める抗議が起こったそうだが、宗教心の強い国でこの手のネタは大問題らしい。原作の小説は1875年に発表され、その設定を現代風に置き換えて作り替えた本作だけど、昔からこんなスキャンダルなことがあったのかと思うと、人間の本質的なところは何も変わらないんだなーという気もする。

そうした騒動が認知度を上げた作品でもあるけれど、観た人を納得させる内容には役者たちの素晴らしい演技も一役買っている。あやしい老婆ディオニシアを演じたルイサ・ウエルタスなどは、その存在自体が非常に印象的だ。個人的に気になるのはアメリアを演じたアナ・クラウディア・タランコン嬢。こんなにかわいらしい16歳の娘に言い寄られたら、そりゃあ神父さまだって…と思わせる美貌の持ち主だけど、その幼い姿の中に潜む色気は実年齢22歳と聞いて納得。しばらくの間はメキシコ映画でしか彼女の姿を見られないかもしれないけれど、今後の活躍を大いに期待したい。

Text:うたまる(キノキノ



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