|
||
【STORY】 ニューイングランドの一流大学が林立する地域の中心地にあるカムデン・カレッジ。学生たちはたまに講義に顔を出し、毎晩繰り広げられるパーティーで忙しい日々を送っている。友情、恋愛、自分を探しながら若者たちの気持ちは交錯し、それぞれの想いを胸に“サタデー・パーティ”の夜を迎える…。 【REVIEW】 1980年代半ば、ミニマリズムやポストモダニズムの作家たちが活躍する一方で、ジェイ・マキナニー、ジョン・アップダイク、デボラ・スパークといった作家たちは若者の孤独感や空しさを描いた小説を次々と発表した。その背景には資本主義社会が産み出した大量消費文化すなわちバブルがあり、無責任・無気力・無関心の三無主義の権化と化した若者たちが多く登場する。なぜ自分達が快楽的・享楽的な生活を送っているのかという意識や将来への展望もなく、今ある現在が現実という意識だけを持っている。そんな彼等が共通に持っているのは倦怠・虚無・憂鬱であり、そんな若者たちの姿から、雑誌「エスクァイア」のデイヴィッド・レヴィットが、“ニュー・ロスト・ジェネレーション”という一種の世代カテゴリーを示す言葉を生んだという。 64年生まれのブレット・イーストン・エリスもニュー・ロスト・ジェネレーション世代の若者を描く作家の一人であり、85年の処女作『レス・ザン・ゼロ』に続いて発表した『ルールズ・オブ・アトラクション』は、数年前に映画化された91年発表の『アメリカン・サイコ』へとつながる3部作のひとつとなっている。 舞台はニューイングランドのハーバードやマサチューセッツ、イエールといった一流大学が林立する地域の中心地にあるカムデン・カレッジ。そこには、講義にはたまに顔を出し、毎晩繰り広げられるパーティーではじける学生たちが溢れかえっている。ローレンはヨーロッパを旅行しているヴィクターに思いを寄せつつも、教室の前で出会ったショーンに何か通じるものを感じ、ショーンも同じ思いを抱く。しかし、ショーンに思いを寄せたのは彼女だけではなかった。前夜祭の夜、それぞれの想いが交錯するが、悲しいまでに空虚な現実が待ち受けている。そこには優しい言葉も救いの手も差し伸べられるわけではない。 監督は『パルプ・フィクション』でタランティーノ監督と共同で脚本を執筆したロジャー・エイヴァリーで、15年の歳月を掛けて映画化にこぎ着けた。過去に『キリング・ゾーイ』を発表し、ゆうばり国際ファンタスティック映画祭でグランプリを獲得。また、メジャースタジオで脚本家として活動したり、テレビ企画やインディペンデント映画の製作を手がけるなど、幅広く活動をしている。原作が複数のストーリーが同時進行するモノローグで書かれているため、映像化は不可能と言われていた小説を、監督は場面転換にフィルムを逆回転させ、同一の時間軸に戻す編集方法を用いることで解決し、ところどころに特殊なカメラワークを用いることで、不思議な視覚効果をもたらした。 日本の文化ではありえないパーティーが繰り広げられる日々や、過激なまでに無謀な日々を送る若者たち行動には理解しがたい部分もあるが、キャラクターたちの心の奥底に潜む寂しさや憂鬱な気持ちはきっと共感できるだろう。見終わったあとにハッピーになるわけでも、ずしんと心に重くのしかかるわけでもないが、どこかに何かが引っかかったような気になる作品だ。 Text:うたまる(キノキノ) Copyright © 2003 UNZIP |