LEN
WISEMAN:
もともと映画を作りたいという気持ちはすごくあったけど、そのためには…まあ、他の人もそうだと思いますが、なんでもやってきたんです。とにかく色々な可能性を追求しながら、この業界に関わってきました。でも、自分の経験で言えることはPVなどの音楽業界の活動と一緒だけど、自分がやりたいと思って一生懸命頑張って、こうやるんだ、こうやって話を持っていくんだと、自分のやりたいことをするために築いていたものとは全然関係ないところから話が実は転がって来たりするんだよね。
LEN
WISEMAN:
業界に携わりながら、自分の作品も温めていたし、また同時に監督としてオファーされて、脚本を読むこともありました。でも、そういった場合は十数人の監督候補の中の一人という感じなので、実際に仕事が受けられるかというと、チャンスは少ないですね。そんな中で、ディメンションフィルムから『クロウ4』を撮らないか?という話があって一度ミーティングを持ったけど、結局その話は無くなっちゃいました。でもそれがきっかけでディメンションフィルムの方々に気に入ってもらえたみたいで、狼男をテーマにした作品の監督をやってみないか?という話に変わりました。そのまま作るのは面白くないけど、新しく作れるならばやりたいなと思い始めて、自分が観客として観たいような狼男の映画をどうやったら作れるか…?というところから『アンダーワールド』に発展したんです。
Q:
何故ここまで『アンダーワールド』は自分で撮るんだと熱意を持って話を進めたのでしょうか?
LEN
WISEMAN:
一緒に脚本を手がけた友人のダニーとケビンと僕の三人の中では、僕が監督をするということで脚本を進めていたんです。それは最初から考えていたことだし…。これは戦略的な話になってしまうけど、自分はどうしても映画を作りたかったので、どうすればチャンスをものに出来るか?ということを考えて、人が出資をしたくなるような企画を作って、その企画に自分が携わっていれば振り落とされることなく監督として話が進むんじゃないかというふうに思ったんです。だからこの作品に脚本家として加わったのも、その可能性を高くするためなんです。でも、『アンダーワールド』を僕が世に出す最初の作品にするんだ!とか、この作品を初監督作品にしなければならないという気持ちは無かったですね。むしろ、とにかく映画を作りたい、なんでもいいから映画を一本監督したいという強い気持ちが決め手になりました。そうは言っても『アンダーワールド』は映画を作っていく中で自分の好きな要素が沢山入っている作品に仕上がっていますけどね。
LEN
WISEMAN:
自分の描いていたヴァンパイアというのは、今までの空想の世界で活躍するようなヴァンパイアと比べると、もっとリアリティを持っていると思います。それは目指したところでもあるし、科学的な根拠があるようなヴァンパイアを描きたかったんです。いわゆる今までのもの、宗教的なものはいっさい排除しています。十字架やにんにく、鏡に映らないとか…。それに、自分のテイストでもあるんだけど、個人的に今までのヴァンパイア像は胡散臭い気持ちが強かったので、違うイメージにチャレンジしました。もともとこの手のジャンルやSFは好きですけど、ホラーが大好きというわけでもないので、そういったキャラクターを使った「アクション映画」を作ったつもりなんです。
UNDERWORLD
UNDERWORLD
Q:
ワイズマン監督が影響を受けた監督や作品を教えてください。
LEN
WISEMAN:
音楽は今回サントラにも参加してもらっているダニー・ローナーに代表されるようなオルタナティブ・ロックを普段聞いてますね。漫画に関しては『攻殻機動隊』とか『NINJA
SCROLL (邦題:獣兵衛忍風帖)』『アキラ』のジャパニメーションなども含めて、子供の頃からコミックスが大好きで、挙げたらきりがないです。沢山好きな作品があります。どうしてゴス系な世界に惹かれるのかは判りませんが、ビジュアルとかそういったスタイルになにか惹かれるものがあるんですよね。だから自分の作品にそういった面が見えたりする傾向があります。よくミーティングで初めて人と合う前には黒い服を来てアクセサリーを沢山付けてタトゥーの入った人を想像されるんですけど(笑)、自分はそんな感じではないですし。そして、映画では好きな監督を挙げるとジェームス・キャメロン、リドリー・スコット、リュック・ベッソンですね。作品では『エイリアン』『エイリアン2』『ターミネーター』『ブレードランナー』といった、どこかシュールな要素のある作品が好きです。「Never
say never(絶対やらないよなんて言わない方がいいよ)」と言いますが、今の時点ではストレートな警官ものとかを撮っている自分は想像できないですね。どこかシュールな要素がないと監督できないような気がします。どうして自分がその要素を持っているのが判らないんですけどね。
LEN
WISEMAN:
ヴァンパイアに関してはどこかヴィンテージな雰囲気を感じさせるような、つまり歴史的な背景を持っているようなヴァンパイア像を意識しました。そして作品全体のことでも言えるのですが、「OLD」と「NEW」をミックスさせた話を作りたかったんです。『インタビュー・ウィズ・ヴァンパイア』と『ブレイド』を合わせた感じかな(笑)。現代に生きるヴァンパイアたちを描いているけど、自分たちの歴史、つまり古き良き時代の物のやり方を未だに持ち合わせていて、それらは住んでいるところや服装に現れていますよね。でもそう言いながらもハイテクにも敏感で携帯を使ったり近代的な技術を使ったりもしています。また狼男たち、ライカンズに関して言えば、昔ながらの狼男は鼻がとんがっているんですけど、「それはもういいよ」って思ったので(笑)、新しい狼男像を模索しました。狼男のイメージって、筋肉質の体に毛がもじゃもじゃしていて、暗闇にいてよく見えないというのがあるけど、それはやめようということにして、ダークな狼とピット・ブル(アメリカン・ピット・ブル・テリア)を掛け合わせたような狼男を作り上げたんです。
UNDERWORLD
Q:
CG全盛の中で、アナログ的な手法にこだわったのは何か意図があるのでしょうか。
LEN
WISEMAN:
CGに関しては、個人的に大好きとはとても言えないんです。とはいえ、今回の作品でCGをあまり使っていない事にはいくつか理由があって、まずはバジェットの問題があります。『ジュラシック・パーク』とは違うので、2000万ドルという制作費の中でいかにクリーチャーを登場させるかというのが問題で、全部CGで作ると予算的にタイトになって、描写的にちゃっちく見えるという危険性も伴うので、プラクティカル(注:監督はアナログでは無く実用的という言い方をしています)な効果を使おうと決めたんです。でも、正直に言うと、あまりCGが好きではないので12000万ドルの予算があってもCGはそんなに使わなかったと思いますね。今回の制作会社であるレイクシャワーにクリーチャーをどうするかというプレゼンの時に、CGで作られたクリーチャーとアナログ的な特殊効果を使って作られたクリーチャーを入れたテープを見せたんだけど、今回はCGを使わなくても良いということに納得してもらいました。『エイリアン』『エイリアン2』『プレデター』『パンプキン・ヘッド』のようなアナログな特殊効果で作られたクリーチャーが好きなんですよね。監督としてなるべく全てのアプローチを自分たちの手で作っていきたいという気持ちがあるので、もしCGを使ったシーンが出てきたら、“プラクティカルな手法で表現できなかったからCGを使うしかなかったんだ”と思って観てもらえば良いなと思います。
Q:
本編のラストシーンからすると次回作の期待が持てますが、構想はあるのでしょうか?
LEN
WISEMAN:
実は今まさに、このホテルの数階上で、一緒に来ている『アンダーワールド』の脚本家でもあるダニーが必死に続編の脚本を書いている途中です。もちろん僕も参加しているし、『アンダーワールド2』も自分で監督するつもりでいるけど、時期は決まっていないですね。他の企画も色々動かしていて、今はブエナ・ビスタに『ブラック・チャプター』という脚本を売っているところです。監督を僕がやるかどうかは判らないけど、その作品を撮ることになれば、その作品の後に『アンダーワールド2』を撮ることになるでしょうね。ちなみに『ブラック・チャプター』は、CIAが幽霊をエージェントとして使っていたというアクション映画です。幽霊はホラー、コメディ、スリラー、ドラマでは観たことがあるけれど、アクション映画で幽霊が活躍するのはまだ観たことがないでしょう?ぜひ楽しみにしてください。