School of Rock
タイトルバックが流れた瞬間に良い映画だと判る、これは数少ないそんな映画です。

STORY:
ジャック・ブラック演じるデューイ・フィンは自分のバンドからクビになって落ち込んでいるミュージシアン。借金でにっちもさっちも行かなくなって代用教員の資格を持つ同居の友人になりすまし、名門私立小学校の5年生クラスの担任にもぐり込む。地域のバンド・バトルの賞金2万ドル欲しさに子供たちとロック・バンドを編成するのだが、校長はもちろん保護者たちにも秘密でことを進めなければならない…。

REVIEW:
どの年代の誰もが多かれ少なかれ「子供ごころ」を持っていて、それを揺り動かすのが「ガキもの」といわれる作品群だ。名作『がんばれ!ベアーズ』はそのひとつ。ひょっとしてこの映画もベアーズの流れか、下手すると亜流かもと心の隅で意地悪なことを考えていたのだがとんでもない。新鮮で楽しくしかも明るいハイレベルのコメディーだ。子供たちのリーダーになるのは自分が編成したバンド(このバンドの名前が<ノー・ヴェーカンシー=満室>で何やら皮肉っぽい)からはじき出されたダメ男のデューイ。子供たちは年間学費が1万5千ドルのエリート私立の生徒で、がちがちの女性校長マリンズ(ジョーン・キューザック)も外見からは判らない葛藤を抱えているという設定。デューイが最初はコンテストに出るための道具として接していた子供たちから次第に思わぬ影響を受けて行くところ、逆に「良い子」たちが段々ガキとしての本性を現してくる過程、そしておカタい校長がきっかけを得て外面とうらはらなワイルドな内面を現す場面、が良質のコメディーをかたち作る要素となっている。

この映画がユニークなのは、上質の音楽、ロック・ミュージックを上手に昇華して媒体にしてしまったコメディーだからだ。ジャック・ブラックは俳優とどっちが本職かといわれる一流のロック・ミュージシアン。レッド・ツエッペリン、スティビー・ニックスをはじめとするサウンド・トラックはオリジナルを加えて十数曲、どれも楽しい。子供たちの多くは厳しいオーディションを経て選ばれた才能ある連中だから、並みのハリウッド子役ではなく、決め手の演奏場面での迫力は素晴らしい。青山真治監督の『ユリイカ』に大きくかかわった多才なジム・オルークがミュージック・コンサルタントとしてこの才能ある子供たちを指導しまとめあげているのだから、こと音楽については気合の入れ方が違う。

特筆すべきは、この映画のチームワークの良さである。監督のリチャード・リンクレイター、脚本のマイク・ホワイト、それにジャック・ブラック、さらには照明、カメラなどのスタッフが絶妙のバランスを作り上げている。こんな素晴らしいチームを作ったのが昨年の実力度18位のプロデューサー、スコット・ルーディンの腕なのだろうか? どちらにしてもこのチームはよほど気が合った(ケミストリーの合った)ものだったことは間違いない。もともと毒のあるロックに拠りながら、しかも子供たちと僕たちに「権威への挑戦を忘れるな」というメッセージを示すコメディーに仕上げた、このバランス感覚。音響ガンガン、CGギラギラの超大作とか、自分勝手の理屈を押し付ける独立系の作品にそろそろ辟易としてきた向きには、明るい画面、良く聴き取れるセリフ、素晴らしい音楽、そしておかしいこの映画は心から楽しめる作品です。最後のクレディットの出し方も洒落ているのでお見逃しなきよう。

Text:NORIO Saitoh

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『スクール・オブ・ロック』
2004年4月29日、日比谷みゆき座他にてロードショー
(2003年/アメリカ/110分/配給:UIP配給)

CAST&CREW:
監督:リチャード・リンクレイター
脚本:マイク・ホワイト
出演:ジャック・ブラック、ジョーン・キューザック、マイク・ホワイト、サラ・シルヴァーマンほか

REVIEWER:
NORIO Saitoh

EXTERNAL LINK:
『スクール・オブ・ロック』公式サイト

DVD:
cover スクール・オブ・ロック
主演:ジャック・ブラック/監督:リチャード・リンクレイター