アカデミー賞受賞のシャーリーズ・セロンの熱演は必見! 泣くに泣けない!女性連続殺人犯のせつない真実。 REVIEW: 実を言うと、パンフレットの解説を読んだだけで涙ぐんでしまった。それだけ実話であるこの物語はたくさんの悲しみを抱えていた。しかし映画が始まってから最後まで1度も泣かなかった。「泣けなかった」のだ。そこにあったのは美化された偽りの世界ではなく、どこかに存在するであろうひとつの現実だった。体重を13キロ以上増やしたシャーリーズ・セロンのおなかの脂肪も身なりも言葉遣いも乱暴な態度もすべてが本物だった。いびつな世界は形を変えることなく、ありのままの真実に近付いていた。だからただただ呆然とするしかなかった。 「モンスター」と呼ばれ、2002年に死刑となった全米初の女性連続殺人犯アイリーン・ウォーノス。幼いころから肉親に虐待され、家を飛び出し、ヒッチハイクをしながら身体を売っていた。自殺さえも考える絶望的な世界で、アイリーンは初めて自分を受け入れてくれたセルビーに本当の愛情を感じるようになる。正当防衛で客の男を殺してしまったことから、身体を売るのをやめ、仕事を得て普通の生活をしようとするアイリーンだったが、やはり現実は彼女を遠ざける。人を殺してお金を奪う。愛する人と一緒にいるにはそれしか手段はなかった。 「人を殺すのはいけないこと」というセルビーに対して、アイリーンは「誰がそんなこと言ったの?」と答える。平和で、仕事があって、好きなことができる、そんな世界に住む人にとって、人を殺すことはいけないこと。しかしアイリーンの住んでいる世界では人を殺すことは愛する人と一緒にいる手段なのだ。ふと戦地にいる人たちもきっとこんな世界に住んでいるのだろうと思った。「人を殺すのはいけないこと?」その答えをずっと考えている。 Text:Yukiko Katsuyama