Z-BOYSたちがスケートカルチャーにもたらした自己主張の観念は、その後のスケートカルチャーを左右するばかりでなく多くの副産物を生み出してきた。自分のスケートスタイルをより可憐に見せるためのファッションや音楽もしかり。しかし彼らの影響の下、スケーターたちは自己表現の手段をライディング以外のモノにも広げはじめた。

スケーターには秀逸なアーティストが多い。まずはなんといっても、ミュージシャンとしての才能を艶やかに発揮するトミー・ゲレロ。さまざまな楽器を使いこなしジャンルを超越したサウンドをクリエイティブする彼は、クラブに通う若い世代の子たちにとっては、スケーターとしてよりもミュージシャンとして馴染みがあるかもしれない。そして一昨年、彼のアルバムで独自なポエムを披露したマーク・ゴンザレス。もう説明不要なストリートのビッグスターの彼だが、御存知フリーハンドのイラストが世界中で評価されるアーティストとしての顔を持っている。もちろん2人ともスケーターとして評価も高く、独自なライディングで強い自己主張をしていたのは言うまでもない。そして、ティーンネイジスモーカーズと題された写真集が絶賛されたエド・テンプルトン。自身のブランドであるトイ・マシーンでは、彼が生み出した独創性のあるモンスターのキャラクターを多く見ることができる。さらに、ダイナソーjrのジャケで抽象的なイラストを披露したニール・ブレンダーは、現在キッズ向けの絵本製作で高い評価を受けているし、ハリウッドではジェイソン・リーが俳優業に専念している。彼らもみんなオリジナリティの高い滑りが支持されてきたスケーターたちだ。

スケーターたちの高い自己表現力は何もスケートボードカルチャー外にかぎってのことではない。無数にあるスケートブランドのウエアやギアたちに目を向ければ、その高いセンスは一目瞭然だ。デッキを並べればすぐさま個展が開けるほどクオリティーが高いグラフィックがあり、ベアリングなどの工業品も遊び心のあるパッケージで包んでしまう姿勢は、まさにスケートカルチャー独自のもの。今やスケートシューズはストリートでもすっかり市民権を得て、その高いデザイン性がスケーター以外からも高い支持を受けている。

これら全てを語るには、最初に言ったとおりZ-BOYSの存在が必要不可欠だ。彼らがスケートに持ち込んだものは、スケートカルチャーにあらゆる可能性と創造力もたらしたのだ。自分のスタイルを追求して自己主張するということは、スケートボードにかぎらずアートの本質である。さまざまなストリートスポットで常日頃から自分を最大限に魅せるトリックをクリエイトしているスケーターたちに、アーティスティックな意識と表現者としての高い才能があるのは当然といえば当然の話だといえる。

斬新な刺激が欲しいなら、この先もスケートボードカルチャーから目を離すことはできない。


Text:Kenichi Takemoto



Copyright (C) 2002 UNZIP

Photo:Craig Stecyk


Photo:Craig Stecyk