スケートボードが永遠にユースカルチャーであり続けるのは、そこに独自のラジカリズムと体制に対するアンチテーゼがあるからに他ならない。この映画で登場するZ-BOYSがスケートに持ち込んだモノはアグレッシブな滑りだけでなく、創造力と独自性そして常に挑戦的な姿勢がある。それはまさに現在のストリートカルチャーそのものであり、ラッパーが持つマイクと同様の自分を表現する武器としてのスケートボードだった。現在までのスケートシーンを振り返ると、彼らが起こしたビックバンがその後のスケートシーンにどれだけ多大な影響を与えているかがよくわかる。

それまでフィギュアスケートのような様式美に捕われていたスケートボードが、彼らの登場後はいかにセンセーショナルで他人がやらないことをやるか、どれだけ格好よくて際どい滑りができるかという部分が重要となっていく。そしてその繰り返しが現在のスケートボードカルチャーを作り上げてきた。バーチカルのライディングにスタイルを持ち込んだクリスチャン・ホソイ、ストリートスケートに不可欠なトリック、オーリーを生み出したアラン・ゲレファント、ストリートスケートを現在のスタイルにまで進化させたマーク・ゴンザレス。今でこそ彼らもスケートシーンの革命家として名を挙げられるが、そもそも彼らはみんなZ-BOYSがスケートに持ち込んだ、自己表現としてのスケートボードとして己のスタイルを追求していったに他ならない。そしてその後のワールドインダストリーの成功、スケーターたちによるカンパニーの設立やチームの立ち上げなども、全てZ-BOYSの流れから来ているといっても過言ではない。そこには常に反体制的な精神と、スケートカルチャーから派生する表現手段の模索が垣間見れるからだ。

現在ではZ-BOYSが魅せたスピーディーかつアグレッシブなスケートボードという部分はずいぶんと変化してしまったが、彼らがスケートボードに持ち込んだラジカルな感性の部分は、やはり今もスケートカルチャーの根本的な部分を支えている。この先、大きなスケートの大会で絵に描いたような完璧な演技を披露する優等生スケーターが現れたとしても、キッズたちが注目するのは、ストリートで強い個性を発揮する枠に納まらないスケーターたちに違いない。そこにスケートボードがただのスポーツに成り得ない魅力があるのだから。

オリジナリティが尊重されるストリートの音楽やアートと同様、スケートボードもスキルがあるだけじゃ認められない。とりあえず格好良くないと話にならないのだ。

だからスケーターたちは技術だけでなく自分自身のスタイルも追求する。この先も自己表現としてのスケートボードがあり、唯一無二のスタイルがリスペクトの対象になっているかぎり、スケーターたちは常に時代の先を行くマイノリティーであり続けるだろう。Z-BOYSがスケートシーンに起こしたビックバンは今もなおカタチを変え、ゆっくりとだけど進化を続けている。

Text:Kenichi Takemoto



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"Z-BOYS"
Photo:Craig Stecyk


Photo:Craig Stecyk