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マンハッタンの豪邸に住み、フェラーリを乗り回すニューヨーク出版界の若き実力者、デヴィット・エイム(トム・クルーズ)。ハンサムで裕福、カリスマ性に満ちた彼の存在は人々を魅了し、彼自身も自由奔放なプレイボーイを気取っていた。その日も、彼のベッドにはジュリー(キャメロン・ディアス)という女性の姿が。ところが、デヴィットは親友ブライアンがバースデーパーティーに連れて来たソフィア(ペネロペ・クルス)に一目で心を奪われる。そして、パーティーに招待していなかった筈のジュリーが現われ、デヴィットの気持ちを見抜いてしまう。カジュアルセックスの振りをしていたが、ジュリーはデヴィットを愛していた。思い詰めたジュリーは彼をドライブに誘い、崖に向かって猛スピードで飛び込む。この事故が彼の人生を大きく狂わせる事になる。一命は取り留めたものの、ハンサムだった顔は見る影も無い醜さに変貌してしまっていた。絶望の中で、彼が求めたのはソフィア。そしてついに元の顔を取り戻す方法を見い出すが、運命は思わぬ方向へ転がり始める…。
観終わった時、ものすごく疲れてしまっていた。しばらく時間が経つと、誰かとこの映画について話したいと思った。まだ観ていない人に、何と言えばよいのかわからなかった。サスペンス映画では、観た後に「あそこってどういう事だったの?」的な会話がよく交わされるが、それだけでなく、もっと話し合いたいことがある様な気がした。もう一度、観たいと思った。そしてそれこそが、キャメロン・クロウ監督とプロデューサーのトム・クルーズの狙いなのだ。…観た人がこの映画について話し合う機会を持つということ。何度も繰り返し観られる映画であるということ。つまり私は狙い通りにはまってしまった訳である。 トム・クルーズの演じるデヴィットは、トム曰く“ニューヨークのプリンスの様な”男。努力した訳でもないのに、他の人がなりたいと思う見かけのすべてと多くの可能性をすでに持っている。そしてそんな彼は、他人の感情に関して無頓着なために、知らずに人を傷つける。自信たっぷりで無邪気な子供のようなデヴィット。だが事故をきっかけに、人目を気にし、過去に自分がして来たことから逃げようとする。この映画はそんな彼の自己発見の旅であり、その旅は過去の代償であるとトム・クルーズは語っている。 ちなみに、タイトルとなっている「バニラ・スカイ」という言葉。デヴィットがソフィアとの会話の中でモネの絵の空の色を「バニラ・スカイ」と表現している。 Text : nakamura [UNZIP] Copyright (c) 2001 UNZIP |