『フランシス・フォード・コッポラ PRESENTS ジーパーズ・クリーパーズ』
ジーナ・フィリップス、ジャスティン・ロング インタビュー

→『ジーパーズ・クリーパーズ』レビュー


■日本にいらした感想をお聞かせいただけますか?

ジーナ・フィリップス(以下 G):「とにかく素敵な所ね。みんなとっても親切なの。私たちってちょっと、ほら・・・甘やかされているじゃない(笑)。でも、ここではもう全てが完璧なのよ! もう帰りたくないわ。友達と来ているんだけど、“もうちょっといさせて”って、どうにかして滞在日数を増やそうとしてるのよ」

ジャスティン・ロング(以下 J):「僕も同じ思いだね。本当に日本が気に入っているんだ。そうだ、僕は日本語が喋れるんだよ。あれを書いた紙をどこへやったかな。誰かが持ってちゃったな・・・。(部屋の反対側にある机のそばへ行き)ああ、これだ。もう一回同じ質問をしてくれる?」

―来日の感想は?「“ニホンニキテ、トテモウレシクオノイマス”。(一同笑い)僕は昨日日本に着いたばかりなんだけど、とにかく皆、信じられないぐらい親切で感激してるよ。凄く楽しんでるよ」

■製作総指揮を務めたコッポラ氏と会った時の印象は?

G:「実は私は数年前に一度フランシスに会ってるの。『レインメーカー』のセットでね。会った途端に彼の人柄に魅了されたわ。親切で、優しくて、面白いんですもの。それに私を見てすぐに私のために歌を歌い始めたのよ! 自分が崇拝する人に会う時って、とってもナーバスになるし、何も期待もできないような気分になるものだけど・・・(ジャスティンが彼女を見ているのに気がつき、)どうしてじっと見ているのよ」。

J:「話を聞いてるだけだよ」

G:「いいえ、あなたは人の話なんて聞きやしないじゃないの!」

J:「じゃあ、聞いてるふりをしているだけだよ」

G:「わかったわよ!(笑) とにかく、初めは怖い人かと思ったけれど、緊張をほぐすのが凄く上手な人なの。『ジーパーズ・クリーパーズ』のセットでも私たち二人を和ませてくれたわ」

J:「僕は彼を崇拝してるなんてもんじゃないよ。彼は伝説の人だからね。彼の作品は全部大好きさ。だから最初はすごくびくびくしてたんだ。まさか自分がフランシス・フォード・コッポラに会えるなんて思ったこともなかったからね。もう最高の経験だった。彼は素晴らしい監督でもあるけど、素晴らしい俳優でもある。彼の指導のもと演じた場面がいくつかあるけれど、彼を見て競うようにして演じていったんだ。自分が本当に役者なんだと感じさせてくれる瞬間もあった。本当に興奮したよ。彼と仕事ができたことを心から光栄に思っている」

■本作出演にあたり具体的にコッポラ氏からアドバイスなどはありましたか?

G:「まずオーディションを受けた時に、自分がこのキャラクターをどのように捉えているか演じて見せるんだけど、その時にいろいろとディスカッションをしたわ。トリッシュはどんな女の子で、弟のダリーはどんな男の子なのかってことをね。ディスカッションを繰り返して行くうちに、どんどん役柄が膨らんでいったの。だから、いろいろな意見がいい形で混ざり合っていったわ。これって映画制作の素晴らしい形だと思うの」

■本作では姉弟を演じたお二人の演技がとても息が合っていて自然でした。自然に姉弟を演じるために意識して取り組んだこと、気を配ったことなどはありますか?

J:「ドウモアリガトウ!」

G:「実はね、やってみたら自然にああなった、っていう感じなの。凄く不思議なんだけど、会った瞬間からあんな感じだったのよ! でも、それが私たち二人が姉弟役でキャスティングされた理由でもあるんだけど、ジャスティンに初めて会ったとき、本当の姉と弟のようにすぐにウマが合うって感じたのよ。愛しているけど、憎たらしい本当の弟みたいだわって。唯一気を配ったことといえば、なるべく長い時間を一緒に過ごすようにしたということぐらいかしら。そうすることでより強い絆を築くことができたわね。それはとっても簡単なことだったけど」

J:「そうだね。とにかく長い間二人で過ごしたよ。すごく小さな村でロケをしてたし、ずっと出演してるのは僕ら二人だけだったしね。長い時間を一緒に過ごせたおかげで、自然な雰囲気が出せたと思う。とにかく僕らが姉と弟の関係をリアルに演じるということはこの作品にとって重要なことだったから、そう言ってもらえてとってもうれしいよ」

■本作の見所をお聞かせてください。

G:「私の意見では二つあるわ。(ジャスティンに向かって)あなたにも聞かせてあげるけど、きっとあなたは私ほど冴えた意見は持ってないと思うわよ(笑)」

J:「じゃあ、その後で僕がひとつ足そうかな。」

G:「いいわよ。ええと、二つっていうのは・・・」

J:「三つにしておいたら?」

G:「そうね(笑)。じゃあ三つあげてみるわね。ひとつは、この作品が姉と弟の話だということ。ロマンティクなラブ・ストーリーが絡まないホラー映画はすごく珍しいと思うし魅力的だと思う。恋愛が描かれてないおかげで、恐怖の物語をきちんと語ることができているの。観客は主人公たちがいつキスするのか、なんてことに気をとられなくて済むでしょ(笑)。こんなところが他のホラーとは一線を画しているわ。それと、二つ目は予測不可能なエンディングね。凄い驚きが待っている。大胆で素晴らしい、身も凍るようなエンディングよ」

J:「それで、三つ目は何?」

G:もうひとつ? そうね・・・、えっと、とにかく魅了される作品だってことかしら!(笑)」

J:「そう、女優のジーナ・フィリップスが魅了された、これが本作の魅力です!(笑)」

G:「とにかく、私たちが作り上げたこの映画は、戦慄、恐怖と気味の悪い生き物が描かれたホラーだけど、登場人物がしっかりと描かれている作品でもあるの」

J:「そう、ホラー映画だってそうでなくちゃならないんだ」

G:「そうなの。この作品ではキャラクターがきちんと描かれているのよ」

J:「キャラクターに共感できなきゃ、恐怖なんてちっとも感じられないよね」

G:「その通りだわ」

J:「この作品が嫌いだって言う人もいる。もちろん少数だけどね。僕の兄が嫌いだって言うからその理由を聞いてみたら、僕がキャラクターを演じているのを知っているからだって。彼以外の人は皆、気に入ってくれてるみたいなんだけどね」

G:「それは彼があなたを良く知っているからだわ! だからなのよ。」

J:「そうだね。だって、彼以外はみんな大好きだって言ってくれてるんだから」

■お二人の演技から得体の知れないものに対する恐怖というのがスクリーンを通してひしひしと伝わってきました。恐怖をリアルに感じさせるために、気を配ったことなどがあったら教えてください。

J:「ドウモアリガトウ」G:「ありがとう!!」

J:「これって凄くいい質問だね。恐怖をいかにリアルに見せるかというのは、一番苦労した部分だったと同時に、役を演じる上での必要不可欠なことだったんだ。この撮影に入る前に舞台に立っていたんだけど、実はそこで自信をつけたんだ。その舞台では素晴らしい女優たちと仕事をしたんだけど、共演した中の一人に僕の友人で、僕が女優として尊敬する人がいたんだ。僕がどうやって恐怖心をリアルに表現できるかって悩んでいた時に、彼女がこうアドバイスしてくれたんだ。“とにかく自分を信じなきゃ。あなたは恐怖を十分に理解しているって信じるの。演じるキャラクターの感情を作りあげるのではなくて、あなたが感じるままに表せばいいのよ。恐ろしいと思った経験はあるばず。幼い頃に感じたような恐怖心をそのまま表せばいいのよ。ちょっと大げさかな、なんて考えずにね。だって、もしあなたが気味の悪いものに追いかけられたり、映画の中に描かれているような恐怖体験をしたら、きっと大慌てするはずなんだから。大声で叫んだり、とんでもないことをしでかしたりするはずなのよ”。それを聞いて、肩の力が抜けた。そして自信が湧いてきたんだ。恐怖におののくことを怖がらない自信がね。だってあんな状況に陥ったら、誰だって気が変になるはずなんだから」

G:「私の場合も似てることはあるかもしれないわ。過去の経験から、恐怖を呼び起こしたという意味ではね。それは別に、演じてる最中に昔のことを思い起こしていたというわけではないのよ。恐怖には段階がある。だから、日常生活で感じるようなものも含めてあらゆるレベルの恐怖を表現していったの。それが一番難しかったところね。物語が進むにつれて恐怖はどんどん加速してゆくから、常に違った度合い、違った種類の恐怖心を表現しなきゃならない。それって体で感じて行くしかないのよ。あの感覚は今でも覚えているわ。頭で考えるというより、すごく肉体的なことだったわ」

J:「シーンの撮影に入る前には肉体的なアプローチから始めたんだ。その辺を走り回るとかね。そうすると、血管は浮きでるわ、汗は噴き出すわで、顔や体に張り詰めた感じが出てくるんだ」

G:「このストーリーって1日に起きた出来事を追っているでしょう。いえ、きっともっと短いわ。17か18時間ぐらいよね。そんな短時間に集中してものすごい恐怖体験をしたら人間って精神だけでなく、肉体もへとへとになるはず。だから、アクションという声がかかるまでは、腕立て伏せをしたりして体を疲労させてたりしたわ。ただ、じっと待っているだけではだめだと思ったの」

■ホラー映画は好きですか? 好きなホラー映画があえれば教えてください

G:「私は『シャイニング』が好き!」

J:「僕はドナルド・サザーランドの『SF/ボディ・スナッチャー』だね!」

G:「うわー、気持ち悪いわ! 凄く怖いのよ」

■今回、本作の出演にあたり参考にされましたか?

G:「実は私の場合、ホラー映画を観て育ったといっても過言ではないの。父がフリークだったから。だから、6歳ぐらいからあらゆるホラー映画を観せられてたのよ。もう体に刷り込まれているから、特にこの作品に出演するにあたって何か特定の作品を参考にしたということはなかったわね」

J:「僕は二人の俳優に注目して研究したんだけど、演技する上でとても参考になったよ。一人はリーランド・オーサーだ。『セブン』、『エイリアン4』、『ベリー・バッド・ウェディング』なんかに出ている俳優なんだ。恐怖に震えるという演技においては彼の右に出るものはいないと思う。『セブン』で“欲望”の犠牲者を演じていたんだけど、恐怖で引きつった様子とか呼吸困難になりそうな感じとかとにかく凄い。あんな演技をする人は見たことがない。彼の演技は凄く参考になったよ。それからヴェロニカ・カートライトだ。『エイリアン』や『SF/ボディ・スナッチャー』に出演している。彼女の目に注目したんだ。今回の作品で僕は目の演技が要求されたから、同じような動きばかりを使うのは嫌だったから、どうやって感情を表そうかと思ってたんだ。彼女はものすごく大きい昆虫みたいな目をしているんだけど、とにかくその目が多くを語るんだ。それも正直にね」

G:「あら、あなたの目も多くを語ってたわよ!」

J:「ほんと! それはすごく嬉しいね。ありがとう」

G:「どういたしまして」(笑)


提供:カフェグルーヴ

Copyright (c) 2001 UNZIP