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かつて“黄金の右脚”と呼ばれる名サッカー選手だったファン(ン・マンタ)は、八百長の嫌疑で怒ったフーリガンに足を折られてしまう。20年後。その時のチームメイトで、今やサッカー界の首領として君臨するハン(パトリック・ツェー)のチーム“デビル=魔鬼隊”の雑用係に身を落としていたファンは、ふとしたことで、あの八百長事件がハンの罠だったことを知る。怒りを胸に、だが何も出来ずふらふらと街にさまよい出たファンは、そこで「少林寺拳法の普及に命を賭ける」とか言って手書きの名刺を渡す、奇妙な屑拾いの青年シン(チャウ・シンチー)と出会う。「脚が不自由でも少林は習える」と言われ激高した彼が投げつけた缶を、シンはたやすく空の彼方に蹴り飛ばすのだった。唖然とするファンを置き去りにして、シンは仕事のゴミ売りに。と、破れ靴で通りかかった饅頭屋の店頭で、太極拳を使って絶品の饅頭を作るムイ(ヴィッキー・チャオ)の姿に見とれて、なんとか気を惹こうとするのだが、ムイは顔中に吹き出物があるせいか心を閉ざしていた。一方ファンは、シンが蹴り飛ばした缶がレンガ塀にめりこんでいるのを発見。シンの恐るべき脚力に気づき、彼を誘ってサッカーチームの結成を持ちかける。シンも少林拳を広める良いきっかけだと、かつて共に少林寺で修行した仲間をスカウトして回る。だが辛い修行の末に“鉄頭功”を会得した一番上の兄弟子(ウォン・ヤッフェイ)は場末のキャバレーの下働きで、支配人にはビール瓶で頭を殴られるばかりの情けない日々を送っていた。“旋風脚”の持ち主である二番目の兄弟子(モー・メイリン)は屋台食堂の皿洗いだ。“鎧の肌”を身につけた三番目の兄弟子(ティン・カイマン)は多忙なサラリーマンだし、ゴールキ−パーに最適な“魔の手”をもつ四番目の兄弟子(チェン・グォクン)は失業中、さらに空中を歩ける“軽功”を身につけたはずの六番目の弟子(リン・ツーソォン)は100キロの巨漢になっていた。最初は乗り気じゃなかった彼らも熱意にうたれて協力することになる。だが最初の練習試合の相手は、ちょっと前にシンがやっつけた不良達のチーム。案の定、反則だらけでボコボコにされてしまうのだが、極限まで痛めつけられた時、彼らの不屈の魂がついに覚醒した! “鋼鉄の脚”を持つシンを中心に、それぞれの得意技を活かした鮮やかなプレーで逆転勝利し、相手チームのチンピラ選手も入団してサッカーチーム“少林隊”が誕生したのだ。こうして勝ち進む少林チームは、最初は舐めきっていたハンのあの手この手の妨害にもめげず、ついに全国大会への出場を果たす。シンは想い人ムイともうまくいきかけるのだが、些細なことで彼女は姿を消してしまうのだった。そして決勝戦。相手はハン率いるデビルチーム。水中ハイテク・トレーニングや違法の筋肉増強剤の投与で不死身と化した選手との熾烈な闘いが展開される。一人また一人と倒されていく少林チームは絶体絶命の危機。負けを覚悟したその時、起死回生の助っ人が現れた! さあ逆転だ!
いやあ参った。馬鹿馬鹿しいくらいのコテコテでムチャクチャなアクション&ギャグ満載の、カンフー&サッカー・コメディであった。超人野球漫画『アストロ球団』の実写サッカー版って感じ。大筋としては、ちょっと流行りが廃れ気味の少林拳を世界に広めるために、かつて少林寺で学んだ6人の仲間達が結集して最新流行のサッカーチームを作り、自軍監督の因縁の敵でもある「サッカー界の悪いボス」率いるサイボーグめいた軍団“デビルチーム”と対戦するってな話。そこに主人公のラブコメが、照れ臭いのか強烈なギャグを入れつつ並行して進行するってな具合である。何と言ってもVFX+ワイヤーアクションを駆使した大袈裟すぎる過剰なアクション表現が売り。サッカーボールは芝生を地面ごと抉りながら飛ぶし、風圧で相手選手は吹っ飛び、球が当たったゴールポストは派手に歪む。それを手で受けたGKは、グローブはおろか服まで焼けながら裂ける!ってな調子。もう真面目な中国拳法ファンは唖然とするしかないかも、だけどブルース・リー映画ファンってたぶん「なんちゃって格闘家」も多いので許すんだろうなぁ(劇中になりきり君も登場するし)。何故か去年まだ未公開なのにベスト10に入れてた「映画秘宝」の読者層にはとにかく大受け必至。というかB級映画ナーズ(オタク)がやたらと激賞してるので期待し過ぎてしまい、その分クドいギャグと人情話めいた骨格の部分にはちょっと辟易してしまったので、これから観る人は期待し過ぎないで観るべし。あ、「バナナの皮にすべって転ぶ」シーンがかくも念入りに撮られてる近年稀にみる映画として(笑)、とにかく一見の価値はある映画であることは間違いないので、劇場で観逃すと後悔するはず……とは言っておくべきかな。 『不夜城』『漂流街』『夜光虫』などのヒット作を連発したノワール小説家の馳星周は、大好きなこの映画監督の名前を逆にしてペンネームに頂いた----という逸話があるくらい熱狂的なファンを持つのが、脚本・監督・主演のチャウ・シンチー[周星馳]だ。近作の『食神』や『喜劇王』などで日本でも知られるようになったけど、地元では長く「香港の寅さん」的人気のヒト(今回は薄まっていたけど人情喜劇テイストの濃い作家だ)で、ジャッキー・チェンと人気を二分するくらいの、香港人なら誰でも知ってる超有名スターなんである(主演映画のうち4本が香港映画歴代ベストテン入りしている)。本作は香港では2001年7月5日に公開され、1週間で『パールハーバー』の2倍の1269万香港ドル、公開50日で香港映画史上最高の6000万香港ドルの興収を打ち立てた。 『ハリポ』なんか目じゃないって熱狂ぶりだったようだ。んでタラちゃんことクエンティン・タランティーノの激賞をもらってミラマックスによる全米配給も獲得したというから、ご当地ギャグを抑え、その分ド派手なVFXが目を惹く快作に仕上げたのが勝因と言えそう。さてキャスト紹介だけど、周星馳映画に欠かせないン・マンタ(『男たちの挽歌III』『食神』『喜劇王』など)は良いとして、まあ『アストロ球団』なので男臭いから他の男性陣紹介はパス。でもさ、ヒロインのムイ役は『決戦・紫禁城』のヴィッキー・チャオなんだけど、ホントは可愛いのに今回はまずブス役で登場、途中で一念発起して美人に…と思ったら酷くケバい変身を遂げ、挙げ句に××ってギャグはちょっとどうかと思うぞ。あと『食神』のカレン・モクや『喜劇王』のセシリア・チャンがお髭をつけて(笑)ちょっとだけゲスト出演しているのも忘れちゃいけないかも。 Text:梶浦秀麿 Copyright (c) 2001 UNZIP |