[クローサー] 夕陽天使/SO CLOSE
2003年3月29日よりシネマスクエアとうきゅう他全国にて公開

監督:コーリー・ユン/出演:スー・チー、ヴィッキー・チャオ、カレン・モクほか
(2002年/香港+アメリカ/1時間51分/配給:ソニー・ピクチャーズ エンタテインメント)

∵公式サイト

【STORY】
美人姉妹のリン(スー・チー)とクワン(ヴィッキー・チャオ)は、暗殺仕事を請け負う“電脳天使”である。亡き父の発明したワールド・パノラマ・システム――あらゆる監視カメラやモニター映像、軍用衛星にまで侵入できる新システムを武器に、アジア最大のネット企業の社長にして麻薬王だったチョウ・ルイ(セク・サウ)暗殺に成功する。その殺害現場に現れた新人女性刑事コン(カレン・モク)は、部下のシウマ(マイケル・ワイ)と共に、鋭い観察眼でリンが仕掛けた超小型カメラの存在に気づき、さらに社長の弟チョウ・ナン(ワン・シュウルン)が怪しいと喝破して独自捜査を開始する。一方、リンは大学時代の男友達ティンヤン(ソン・スンホン)と再会、デートを重ね、次の暗殺依頼をキャンセルするようクワンに指示する。だがクワンは独断で仕事に向かう。気づいて現場に駆けつけたリンは、撃てないクワンに代わって暗殺を遂行。しかし、この依頼は実は“電脳天使”抹殺の罠でもあった。依頼メールを解読したコン刑事らと一戦交えることになるリンとクワンを、チョウ・ナンの部下が襲い、3人の女性の因縁が絡み合う。なんとか事なきを得たリンは、ティンヤンに過去を打ち明け、足を洗う決意をする。だが、コン刑事に余計なちょっかいを出して逆に追いつめられたクワンの脱出ナビゲートの最中、自宅を嗅ぎ付けたチョウ・ナン配下の大部隊がリンを襲撃する!

【REVIEW】
とにかく『少林サッカー』のヒロイン、ヴィッキー・チャオが観たかったので、個人的には大満足、の美少女アクション活劇であった。チラシには3人の女優が並んでるのでうっかり『キャッツ・アイ』三人姉妹か『チャーリーズ・エンジェル』系かと思ってたら、1人は女刑事で、しかもアクションの基本は「女1人VS大量の敵」ってパターンであった。つまりヴィッキー・チャオ演じる妹クワンは巧妙なハッキングと音声誘導を担当してて、敵地に乗り込むのは『トランスポーター』のスー・チー(『ミレニアム・マンボ』他)演じる姉リン1人って案配。で、“天使”なので白ずくめで登場するリンは、『マトリックス』のトリニティのように宙を飛び、銃火器や青酸ガスを自在に操るアサシン(暗殺者)として冷徹に敵勢を処理、んで何故か服脱いでキャッツアイのレオタード姿にオマージュを捧げて窓から飛び下りるのだった。対する『天使の涙』のカレン・モク(『少林サッカー』にも鬚つけてカメオ出演)演じる女刑事コンも、忠実な部下クンが数合わせにいるものの、例えばエレベータ内での悪漢2人を相手に見事な殺陣を披露して好敵手ぶりをみせるのだ。リンとコンの手錠で繋がれての格闘戦(チェーン・デスマッチ!)もあれば、バスルームでの姉妹対決もあったりと、とにかく「女性による華麗なアクション」を見せるためにのみストーリーが展開してゆくかのよう。クワンとコンのカーチェイスや、壮絶な“天使”抹殺戦を経て、クライマックスはコンのナビゲートによるクワンの敵地潜入がしっかりたっぷり描かれて(ここでヴィッキー・チャオ観に来たファンは「待ってました!」と喜ぶべし)、ついにラスボスとの闘いではクワンとリンが共闘する!ってなクライマックスとなる。とにかく「戦闘美少女」系アクションを堪能すべし、ってとこか。

でも実はお話的には、『ニキータ』と『チャーリーズ・エンジェル』を混ぜる「ムリさ」がちょっとツラい。つまりアサッシン(暗殺者)ものの暗く重いハードボイルドさと、陽気な可愛い子ちゃんの恋あり活劇ありってオチャラケ味という「水と油」を混ぜる欲張りさで、さまざまなシチュエーションでのアクション・シーンの数々の面白さは買うんだけど、ロマンス描写は凡庸で、なんとかトーンを調整してジメジメ人情メロドラマ系にオトしてみましたってオチにはガックシする人も多いかも。あ、雨に濡れて凍える彼女のために、彼氏がコンビニに駆け込み、ミネラルウォーターのプラスチック・ボトルをレンジでチンしてから渡すってなシーンがあるんだけど、香港ではこういうのアリなのかな? 「男のさり気ない優しさ」演出、らしき描写に全然ピンとこなかったのは、僕がPL法表示(そのまま温めないでください)に従順すぎる気弱な性格だからなのか…‥ううむ。

とにかく三大中華圏スター女優揃い踏みってのがウリ。スー・チーは台湾出身でモデルとして活躍し、『ロレッタ・リー×スー・チーin sex & 禅』(笑)以来、香港映画界では抜きん出た出演本数を誇るセクシー系女優。カレン・モクは香港映画界の誇る才媛にして、歌手としても活躍中。そしてヴィッキー・チャオは中国初のアイドル・スターとして期待される大器。この台・香・中三大女優を、リュック・べッソン製作『トランスポーター』の監督に抜擢され、ハリウッド映画デビューを果たしたアクション派監督、コーリー・ユンが自在に料理したって映画なのだ。ちなみに男優陣では 韓国からソン・スンホン(TVドラマ『オータム・イン・マイ・ハート 秋の童話』)、日本から倉田保昭(TVドラマ『Gメン'75』、『フィスト・オブ・レジェンド 怒りの鉄拳』など)が参加しているのにも注目か。なお、主題歌「YOU」をカレン・モクが歌い、劇中歌にカーペンターズ「遥かなる影」が流れたりもするのだった。

Text:梶浦秀麿


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