THE UNITED STATES OF LELAND
何故、彼は元カノの知的障害を持つ弟を殺したのか?
自由な現代アメリカ社会の「生き難さ」に鮮烈に迫る問題作。

REVIEW:
元カノの弟である知的障害者を殺した16歳の少年。その動機とは?――つい酒鬼薔薇少年の事件や、そこから出発した舞城王太郎の一連の小説や、さらに今も続く幼少年少女たちの殺人事件の数々……なんてのを想起してしまうのだが、僕らが安易にわかりやすい動機(憎悪や狂信や倒錯や身代わりetc.)を求めてしまうのに対し、16歳のリーランド少年(『完全犯罪クラブ』のR・ゴズリング)は、少年院でノートを書くことによって、自らの殺人のセンシティヴで複雑な動機を探る。題名にある「合衆国」とは少年院で配られるノートの表紙、自由の女神の写真上にあるタイトルで、おそらく建国二百周年記念に作られたものの売れ残りだろう。そこに自分の名を書き込むことで、「自分にとってのアメリカ」自体が全ての原因であるかのように、少年は過去を振り返るのだ。失恋や離婚や不倫、憐れみとストレスと逃避(ドラッグ)が蔓延する周囲の事例を挙げて「永遠の愛は不可能なのか?」と問い、「善は悪から生まれる」(『オール・ザ・キングスメン』1949年)式の古くからある人生哲学に至るのだが……。彼に興味を持つ作家志望の少年院教官(『オーシャンズ11』のD・チードル)は、間違いを3つ犯す。禁じられても彼を取材し、遠距離恋愛の彼女を裏切り、そして金属探知ゲートをバカするという過ちだ。彼が「裏切り」を悔い彼女との和解に走る結論は安易だが、ヤク中の元カノ(『ドニー・ダーコ』のJ・マローン)の描写が素晴らしいので許す(笑)。

Text:Hidemaro Kajiura

Copyright © 2004 UNZIP.
『16歳の合衆国』
2004年8月7日よりシネマスクエアとうきゅう他全国順次公開
(2003年/アメリカ/1時間44分/配給:アスミック・エース エンタテインメント)

CAST&CREW:
監督・脚本:マシュー・ライアン・ホーグ
製作・出演:ケヴィン・スペイシー
出演:ドン・チードル、ライアン・ゴズリング、クリス・クライン、ジェナ・マローン、レナ・オリンほか

REVIEWER:
梶浦秀麿

EXTERNAL LINK:
『16歳の合衆国』公式サイト